心-3
「石島さんの彼女は演技じゃないんですか?」
酔った勢いでそんな失礼なことを聞けば
「さぁな」
なんて苦笑いした。
1つ上で、モテた石島さんを恋愛対象に考えたことはない。
大学時代もいつも綺麗な女の子が傍にいたし
社会人になってもそれは変わらないんだろう。
年に1回のサークルの飲み会も
必ず参加してるけど、他の男子と違って疲れている感じがしない。
そんな石島さんに抱きしめられる幻想を初めて抱いた。
この人に抱きしめられたらドキドキするんだろうな・・・
「松元さんは今までの彼氏とのセックスは演技なんだ?」
今まで、飲み会で顔を合わせてもあいさつする程度で
こんな個人的な突っ込んだ話をするのは初めてだった。
「半分演技、半分本気。ですかね」
この返事も半分本気、半分冗談、だ。
「なんで演技するんだよ」
あ。ムクれた。
もう32歳にはなるはずの男の顔を可愛いと思ったのは初めてだ。
「女の事情です」
この話は男と話すもんじゃない。
それを感じとった美香が、さりげなく話題を変えた。
「石島さんは結婚しないんですか?」