ハッピー・エスコート社 顛末記-1
1.
浜崎健介は、指定された帝国ホテルのロビーに、10分前に到着した。
一流企業の社員らしく、かといってあまり堅苦しくなく、ツイードの上下にノーネクタイ。
体格も良く風采のよい健介は、中々板についている。
「あのう、エスコート社の方?」
約束の時間を10分過ぎて、ソファーに腰をかけて目を落としていた雑誌に、影が落ちた。
目の前に、足を揃えたベージュのパンプス。
顔を上げていくと、落ち着いたベージュのスーツを着た女が立っている。恐らく目立たない服装を選んできたのであろう。
「はい、浜崎健介ともうします。真知子さんですね。本日は有難うございます」
ニッコリと、人懐こい笑顔を見せて、健介は挨拶を返した。こう言うことには、健介は自信があった。
どんなブスが来るかと覚悟をしてきた健介は、目を見張った。テレビドラマでよく見かける、高島礼子の再来のような美人が立っている。高島礼子は、健介が憧れの女優だ。
「ここでは何ですから、一寸バーの方で」
緊張に顔を固くしている真知子には、少しアルコールを入れた方がいい。
バーの観葉植物の陰のテーブルに移った。
健介が、ジャック・ダニエルのストレートを頼むと、真知子は同じものを水割りで注文した。
「浜崎さんのような方でよかったわ。もし、ホストクラブのような人だったら、帰って仕舞うつもりでしたの」
10分遅れてきたのは、物陰で観察をしていたのだろう。
「貴女のような美しい方が見えるなんて、・・・高島礼子さんに似ていると言われませんか?」
「はい、時々・・・」
アルコールが入って、会話が健介のペースに乗ってきた。
「お部屋はどうしましょう?」
「このホテルに、ブッキングをしてありますの」
真知子から部屋のキーカードを受け取り、健介は先に立った。
部屋に入ると、健介はカーテンを閉め、枕灯の明かりを落とした。
何をするかは決まっているし、時間でする仕事と割り切って、健介はさっさと着ているいるものを脱ぎ捨てた。
「僕はシャワーを使ってきましたので、真知子さんよろしかったらどうぞ」
「いえ、私も済ませてきました。浜崎さんさえお差支えなければ、このままで」
(これで30分は節約になる)
健介は先にベッドに入って、真知子を待った。
真知子は、健介に背を向けて、おずおずと恥ずかしそうに入ってきた。肌色のパンティを付けていた。
「僕、高島礼子さんのファンなんです。何か夢みたいだなあ」
「そんなこと言われては、高島さんに申し訳ありませんわ」
「真知子さんの方が、ずっと素敵ですよ」
裸身の真知子は、痩せ過ぎず太りすぎず、そっと胸に手を触れると、肌はしっとりと潤んでいて、食欲をそそる。