不良少年-2
行くあてがあったわけではない。
それどころか自分がどこをどう歩いたのかさえ、よく憶えていない。
街の喧騒をぼんやり聴きながら、機械的に足を運んでいるにすぎなかった。
「あれ……お前、見た顔だな」
そんなナオキに声をかけたのがケンジだった。
「どうしたよ。らしくねえな優等生が、こんな時間に」
「別に、ちょっと……歩いてるだけ」
「目立つだろ。制服だと」
はじめて会話をした不良少年は、思っていたより気さくな印象だった。
事情を詮索することなく気前よく食事を奢ってくれ、
「どうせ寝ぐらもないんだろ」
と、宿泊の場所まで紹介してくれると言う。
だが……親切な素振りも魂胆があってのことだった。
案内されたマンションの部屋には、ケンジと同じような少年達がたむろしていた。
室内はあきらかに煙草とは異なる煙が充満し、空き缶に押し込まれた吸い殻がまだくすぶっているのに、もう次を咥えて煙を立ちのぼらせている。
「あはは、誰よ、こいつ」
ただでさえ尋常でない目付きが好色に血走るのをみて、ナオキは踵を返し逃げ出した。
それに感づくことができたのは、決して癒されない痛みを身体に刻み込まれた、哀しい代償かもしれない。
性欲の捌け口とみなされる恐怖。
それも突発的な衝動の餌食にされた最初の晩よりも、明らかな意思によって凌辱の限りを尽くされた二日目の晩。
アキオのそれをさらに凶暴に、さらに残酷に、狂気すら感じる危険な気配……。