結局ファミレス-1
空が、茜色に染まっていく。
ここの場所から見る景色は何年ぶりなんだろう。
小さな駅の小さな階段。
そこにあたしは腰かけ、タバコに火をつけた。
車の免許をとってからというものの、電車に乗る事を極力避けていた。
あいつを思い出してしまうから…
『そぅ言えば、あの頃もあたしここで待ってたんだよな』
誰に言う分けでもなく、自然と言葉が溢れる。
そして、思い出しては今まで忘れていた幸せを胸にしまっていた。
こうして、この場所に今いると言う事はあたしの中で確実に思い出になったと言う事だ。
そろそろ帰るかと思い、腰を上げた時に遠くの方でクラクションが鳴る。
さほど気にしないあたしは振り向きもせずに車へ歩き出した。
現実に帰るために。
『……なんで?』
あたしの目に写っていたのは、あの頃と変わらない車に乗ったあの頃と変わってしまった彼だった。
『やっぱお前か』
笑って窓から顔を出す。
『ちょ…ちゃうやん。なんでなん』
『久しぶりに会ったのにそんな顔してんじゃねぇよ』
車から流れる低音のサウンドがうるさい。
『そやけど…なんでここにいてるの』
『あー?聞えねぇって!とりあえず乗れや』
『ちゃうやん!そのバカでかい音楽切ったらええんちゃうの!』
お互い半分叫びながらの会話。
『あーもぅ!ウッゼ』
そぅ言って彼はあたしを無理矢理車に押し込んだ。
やっぱあの頃と変わらない景色。
耳にはやっぱり彼の言葉は入らない。