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そして16年目の恋模様(クラス1-AB)
【女性向け 官能小説】

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結婚のその後に-1

【結婚のその後に】

結婚式が終わった次の日、それを待っていたかのように慎吾の容態は急変した。しばらく小康を保ってから回復したが、式に出席した時のような体調の良さはもう望めなかった。

慎吾から婚姻届を貰った次の日、呼び出されたオレは婚姻届の本当の理由を聞かされた。

余命3ヶ月。若さが進行を速めた病魔は、手術ができないほど慎吾を蝕んでいた。ずっと健康体でいたことが慎吾の油断を招いた結果だった。

慎吾にとって心残りは千尋だった。入院前で悩んでいた時に、千尋からオレに対する気持ちを聞かされたが、慎吾は当然のように反対した。これは婚姻届を貰った日にそれは聞いた。慎吾はそうではなく千尋をオレの養女にと考えていたようだ。

しかし、千尋にオレとのことを反対してから、頻繁に知子の夢を見るようになったそうだ。その知子が千尋とオレの結婚を薦めたので、気持ちが変わったそうだ。なるほど、昔から慎吾は知子の意見を尊重していた。

「とにかく、何が何でも1月は頑張る。オレに千尋の花嫁姿を見せてくれ」

頭を下げる友人に応える言葉は少なかった。

「ああ、全部任せろ」

涙を流しながらそれだけ答えた。

千尋も薄々感づいていたようだ。式を挙げるまでにも、深夜共に眠るベッドを1人離れ、すすり泣く泣き声を頻繁に聞いた。声を掛ければ慎吾の病気の話になりそうなので、オレは黙って愛する者のすすり泣きを聞いた。オレは自分の嗚咽が千尋に届かないように気を付けた。

結婚式後の1月間、慎吾も頑張ったがやはりその日を迎えてしまった。

関係者が見守る中、意識が混濁する小康状態が続いたが、深夜に意識がハッキリした瞬間があった。

「すまん…、ぜ、全部…、全、部、お前に押し…付けた…」

友人は千尋が繋いだ手を強く握り、ハッキリとした視線でオレを見据えて言った。

千尋のことは元より、自分が他界してからの後始末、それに今も横で身を震わせながら見守る千尋の祖父母との仲立ちなどの諸々を気にしての言葉だ。

「何が押し付けただバカ野郎!千尋は最初からオレのもんだ!お前から押し付けられた覚えはないぞ!」

涙交じりのオレの罵声を聞いた友人はニヤリと笑うと、千尋の手を握る力をふっと抜いて目を閉じた。千尋のすすり泣く声が大きくなった。

「バカ、寝るな!直ぐに孫の顔を見せてやるから、目を開けろ!起きろよ慎吾!」

その声に友人は応えた。ゆっくりと目を開き、焦点の定まらない目を愛する娘に注いだ。

「良か…ったな…」

「うん、うん、うん」

千尋は慎吾の手を握りしめながら、それに何度も肯きながら応えた。千尋に握りしめられた慎吾の手に一瞬グッと力が入ったが、それを合図に全身の力がすーっと抜けていった。

「お父さあん、やだよう、死んじゃやだよう、お父さあああん、わああああん」

「慎吾お、バカ、目を覚ませよおお」

オレは千尋の体ごと、慎吾の体を抱きしめた。その瞬間、オレの頭に妄想の声が聞こえてきた。



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