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そして16年目の恋模様(クラス1-AB)
【女性向け 官能小説】

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ハードル-5

「はい、そうです。早すぎるとお思いでしょうが、2人はそれを望んでますし、回りも応援してくれてます」

「何を言ってる?応援してくれるだと。君はどうかしらんが、千尋の回りで応援してるのは子供ばかりだろ。知子の時もそうだった。回りの子供達が応援すると口々に言いに来やがった。親子揃って同じことをするとは情けない」

「しかし、実際にみんなが応援して、この千尋が生まれたんです。どうか冷静になって下さい」

「そうか、佐々木か、どこかで見た顔だと思っていたが、君はあの時にもここに来て、冷静に話合おうって、生意気なことを言ってたな」

「そうです。あの時は生意気なことを言ってすみませんでした」

オレは頭を下げた。

生まれる前から、オレが自分の誕生を応援していたことを知って、千尋は驚いていた。

「確か、佐々木不動産の倅だったな。君が余計なことをして、高校中退のあいつに就職の世話をしてなかったら、知子は帰って来たはずだ」

「確かに親に慎吾の就職を頼みました。しかし、それだけです。実際に頑張ってたのは慎吾自身なんです。それに知子さんも」

「話にならん。帰ってくれ!」

「何言ってるんですか、この子は知子の子供なんですよ。あなたは自分の孫をどうして認めてあげないんですか」

いい加減、オレの声も荒くなってきた。

「知子なんて娘はオレの子供じゃない。そんなヤツの娘の結婚式なんて知るか!帰れ!」

武弘が今まで以上の怒鳴り声を上げた。

今日は無理か。

「わかりました。今日は引き上げます。千尋、出直そう」

オレが俯いて泣いている千尋を促した時、突然、妄想の声が聞こえた。

(待って!今帰ったらダメ!)

脳裏に響く激しい声に、オレが帰ろう踏み出していた足を止めた。

(お母さん!お願い!)

次にその声が頭に響いた途端、今まで黙っていた知津子が声を上げた。

「私は行きますよ」

「何だと!」

武弘が目を剥いて知津子を睨んだ。

「もう後悔したくありません。あなたが何を仰ろうと、私は可愛い孫の結婚式に行きます」

「何が後悔だ。そんなことは一度もしたことなど無い」

「そうでしょうよ。全部人のせいばかりにして、自分で解決しようとしないあなたには、後悔なんてないでしょうね。それに比べて佐々木さんは高校生の頃から立派でした。あの時も私たちなんかより、遥かに知子のことを考えてくれてました。その佐々木さんが孫の相手なら私は大賛成です」

「お前、自分の言ってることがわかってるのか」

「あなたこそ、少しでも回りを見ることをなさって下さい。内に籠って、慎吾さんが悪い、誰が悪い、学校が悪い、就職をさせた佐々木さんが悪いってウジウジと。それを見続けなければ成らない私は、どれだけ情けなかったか」

「お前…」

今まで、そんな口答えをしたことが無かったのか、畳み掛ける知津子の言葉に、武弘は驚いて絶句していた。そんな武弘を尻目に知津子がオレ達に声を掛けた。

「さあ、こんなところで立ち話もなんですよ。上がって結婚式の話を聞かせてちょうだい。さあ、千尋ちゃん、入って入って」

「でも…」

消然とする武弘に気兼ねして、オレも千尋も躊躇した。その時、またそれが聞こえた。

(父が呆けてる内に入るのよ。ほら、早く)

千尋はまた同じ妄想を聞いたのか、それを聞いた途端、玄関の中に入って行った。オレも慌ててそれに続いた。




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