序章-1
【そして16年目の恋模様】
【序章】
友人からの頼まれごとを受けた。
それを口にした友人は、凄く申し訳無そうにしたが、それを拒む程に2人の間は浅い付き合いでは無い。それにオレは端からそのつもりでいたから二つ返事で応じた。
「いいよ、気にするな」
「すまん、浩太」
「水臭いこと言うな。お前とオレの間に遠慮はいるかよ。善は急げだ、なんなら今日からでもいいぞ」
オレの返事を聞き、すっかり気落ちしていた友人の弱々しい表情の中に、ようやく安堵の色が浮んだ。
「さっき言った通り、長くは掛らないと思う。しばらく頼む…」
友人はそれが切なる願いごとのように、再び沈痛の表情に戻ると頭を下げた。
「まあ、オレに任せてお前は自分のことに専念しろよな」
オレは友人の狭まった肩を、軽くポンと叩いた。