妖怪艶義〜セドナ〜-6
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彼女に丁寧に吸引され、最後の一滴まで搾り取られた私は、また洞穴へと戻される。
射精の余韻で放心している私をよそに、彼女はどこからともなく火を取り出して焚火をおこし、そのそばにアザラシや魚といった魚介類を山積みにし、飲み水を満たした石製の桶を残して、いずこともなく去っていく。
そして私はしばらくしてから起き上がり、焚火で体を乾かし温めてから、供された魚介類を食べる――こうして私は、精を提供する代わりに、彼女に‘飼育’されて生きているのだ。
単眼の巨大な女神が住まう極北の地――もはやここは人智の及ぶ領域ではなく、救助される確率など皆無に等しいかもしれないが、それでも、自分の行く末を考えないわけにはいかない。
空き瓶があったという事は、この洞穴には先住者がいたのだろう。しかし洞窟内をくまなく探しても、人骨を発見する事はできなかった。
長い年月の間に風化したのか、それとも――
彼女の‘飼育’は、いつまで続くのだろうか。精液が目的とすれば、この先もまだ、この家畜のような生活が続くのだろうか。
精が出せなくなればどうなるだろう。あるいはそもそも精液が目的ではなく、ただの気紛れで弄ばれているとしたら、飽きられた私はどうなるだろう。
いつか彼女の舌の上で射精して、そのまま洞穴に帰ることなく、彼女の体内に還っていく自分を想像してみる――もはや、それも悪くないかもしれない。
昔読んだ小説の一節が、ふと頭を過ぎって消えた。