ピーマン-1
やっぱ、あたしはあたしで。
どう見てもあたしはあたしと言う人間にしか見えない。
見られない。
『お前さ、またこれ買ったの?』
『なんでーいいじゃん。あんただって食べるでしょ』
黙っているあたしの目の前でまたいつもの言い合いをしている2人。
くだらない。
『なぁ、お前もなんか言ってやれよ。こんなん食えないよな』
こっちを向いて、ピーマンをあたしに渡してくる。
あたしを巻き込むのはやめてほしい。
『あたしは好きだよ。ピーマン。細かく刻めば食えるって』
彼女があたしの1言でほら見ろと言わんばかりに彼を睨みつける。
『この前も食ったじゃん。ちゃんと細かく刻んでサラダにしてあったでしょ』
どうやら、彼女の勝利らしい。
買い物カゴにはピーマンが入れられた。
『ピーマンなんて苦いだけじゃん。なにが美味いんだよ』
あたしの隣で負け犬が嘆いている。
彼女の後ろ姿を見つめながらあたしは言った。
『苦いけど、美味しく感じる人だっているんだよ。あたしは好き』
『ふーん。そんなもんかね』
ねぇ、それはあたしの気持ち。