ピーマン-2
『たいしたもんじゃないけど、どーぞ』
部屋にいっぱいの美味しそうな香りが立ち込める。
あたしの前には、見慣れた2人。部屋を見渡すと、前見た時よりも2人の思い出が溢れかえっている。
この部屋はあたしにとったら拷問だ。
『ぁ、美味しそう』
テーブルには、パスタとスープとピーマンの入ったサラダ。
『ホントに簡単なものしか作れなくてごめんね』
そう言って彼女はフォークをパスタに巻き付ける
『こんだけ作れれば充分だよ』
『ありがとう。てか、あんたはいつまで彼氏作んないの?』
彼女の言葉に思わず彼の方を見る。
彼は、何も言わずにサラダの上に乗ってるピーマンを食べる。
『…そうだね。そろそろ彼氏欲しいかな』
彼女はその言葉で優しく笑った。
そんな彼女を見ると、胸が締め付けられる。
あたしは、ピーマンを避けてサラダを摘んだ。
『ホントに美味しかった。ごちそうさま』
玄関であたしは靴を履き、あの2人は1段高い所から一緒にあたしを見下ろす。
『もぅちょっとゆっくりしてけばいいのにー』
『何言ってんだよ。こいつだって明日仕事なの!お前と違って!』
『いいよ、また来れるしね』
『そうだよ。また来てねぇ。結婚するって言っても、ここ離れるとかないし』
『…そうだね』
最後に、笑った。
現実が押し寄せてくる。
彼の顔が見れなかった。
『今度来る時は、ピーマン食える様にしとけよ。お前嘘ばっか』
そう言って笑う。