波乱の高円寺-1
ベッドで毛布にくるまって仮眠していた。ふたりとも上半身は裸だった。
(好きな人に抱かれながら、うとうとすることが、こんなに幸せだなんて……)
ストッキング越しにクリ○リスやオマ○コを愛撫されて、レイは腰をふるわせて悶えた。そして、泣きながら、愛する人の指を拒んでしまった。
彼の求めに応えられなかった自分の不甲斐なさ。自己嫌悪に陥りそうになったが、紀夫はレイの幼さ(いとけなさ)を理解してくれた。ぎゅっと抱きしめてくれたのだった。
「レイちゃん、起きてる?」
耳元で紀夫は言った。起き抜けみたいな声。やっぱり眠っていたのか?
「起きてます」
「ルノアール行こうか」
「ルノアール?」
「喫茶店だよ」
紀夫は毛布からそっと出て、起き上がった。愛撫はもう終わりなのか? 男として渡部紀夫は満足したのだろうか? からだを寄せ合って仮眠しているときも、トランクスの中の勃起したものを意識していたレイだった。
紀夫は白い肌着の上にボタンダウンシャツを身に着けてチノパンを穿いていた。レイはあわてて毛布から抜け出し、サイドテーブルの上のピンクブラを手に取った。胸に当てがう。
「レイちゃん、ホック留めようか?」
「いえ、いいです……」
紀夫の申し出にどぎまぎしてしまう。
「いいじゃないか。恋人なんだから」
紀夫は、レイが腰掛けているベッドに膝を付けて上がってきた。恋人という言葉にドキッとする。彼の両手は、背中にまわっているレイの指にそっと触れてきた。
「指をどかして」
「はい……」
恥ずかしかった。
(男の人にブラを着けてもらうなんて……)
「レイちゃんは僕の恋人なんだ」
レイのブラジャーのホックを留めた紀夫は肩甲骨の下にくちびるを這わせてきた。背中にキスされながらブラの装着具合を指で確かめられる。
渡部紀夫の恋人になったんだという感覚が背中から湧き上がってきていた。ジワッと――。
「レイちゃんの肌はすごく綺麗だ。……したくなる」
聞き取れなかった言葉=セックス? 紀夫の言葉は甘く切なく響いてきた。
(また愛撫されるだろうか?)
だが、紀夫はボタンダウンシャツの上にパーカーを羽織った。レイは、ほっとしながらも物足りなさも感じていた。
(誠実な人なんだ……)
レイがボーダーニットを着ているとき、居間から軽快なメロディーが聞こえてきた。着信音だと思った。紀夫はあわててベッドルームから出ていった。