鬼畜の愛-6
「その感覚はなんともいえないものでしたね。気持ちいいんですけど、逃げ出したい恥ずかしさがあって、ごちゃまぜになって、それが昂奮を増長していった感じでした。もうひとつ、舌がすっと下がった時にわかったんですけど、アソコって、肛門のすぐそばなんですね。自分の体なのに驚きました……」
秘唇に触れられた。
「声を上げたのを憶えています。あとはどうなったのか……」
エクスタシーを感じていたのはまちがいないが、絶頂ではなかった。初めて触れられた性器。それも舌で……。そこはオシッコをするところ、何するの、やめて、……気持ちいい……。
「混乱して、意識がどうかしていたんですね……」
彼の体臭が安らかな眠りを誘った。夜中に目を覚ますと宮部の胸に抱かれていた。パンツもパジャマも穿いていた。
「たぶん、明け方近くだったと思います。下半身に何か異変を感じて目覚めると、あたしの股に宮部の顔がありました。舐めていたんです」
「先生……」
寝ぼけた頭を起こして宮部の目と見合った。
「ごめんね。起しちゃったね」
そしてふたたび性器に口をつけた。もやもやとその部分が膨らんでいくような感じがした。
体に力が入らない。まだ眠かったせいもあっただろうが、やはり舐められている裂け目から広がる快感に支配されていたのだと思う。
「なぜそんな汚れたところを舐めるのか、理解できない想いと、宮部の唇や舌が生み出す心地よさを感じていると、理屈のない納得が巡っていきました。だって気持ちいいんですから。だから宮部はあたしのために舐めてくれている。あたしはそれだけを考えて彼の愛撫を受け続けました。延々と、性器とお尻はやさしく触れられ、夜が明けて、日差しがカーテンを染めたことは憶えています。疲れと気持ちよさでいつの間にか眠ってしまいました。まだ子供だったんですね」
目覚めたのは昼近くだった。全裸だったのに、また下着も衣服も身につけている。
(宮部が着せてくれた……)
憶えてはいないが、嬉しかった。
宮部は居間で煙草を喫いながらテレビを観ていた。
「あたしは黙って宮部の横に座りました。寄り添うように。……気持ちがふわふわと浮いている感じでした。宮部があたしの肩を抱いてくれた……」
それは一皮むけた自分を感じた瞬間だった。
「肩を抱かれて身を寄せるって、大人の雰囲気でしょう?あたしにはそう思えたんです。彼の首筋に顔を埋めるようにして抱きつくと、宮部はそれを受けながら言いました」
「今日から仕事で家を空ける。十日くらい留守になるかな」
突然だったのできょとんとしていると、
「しっかり勉強してるんだよ。もしここのほうがやりやすかったら来てもいいよ。鍵渡しておくから。お風呂も自由に使ってかまわないよ」
「はい……」
(仕事って、何だろう……)
ぼんやり思いましたが、深く考えることはなかった。
「返事をしたままあたしは行き先を訊くこともせず、黙っていました。何となく取り残されたような、あとから思うと心が疎外感に被われていたのでしょうね。毎日一緒にいた夏休み。かれがそばにいることが日常だったのに、いなくなってしまう予期せぬ状況にかすかな動揺を覚えていたのです。そしてあたしの未熟な『愛と性』は、彼の愛撫を受けているうちに女の根を宮部に着床させていたようでした」
「戸じまりは気を付けてね」
大きなバッグを提げた宮部はそれだけ言うとあっさり出て行った。玄関で手を振るあたしを振り返りもせずに……。
そのあと、何も手に付かず、勉強にも身が入らなくてアパートに帰った。
宮部の家の鍵を開けたのは三日後のことである。その間風呂に入っていなかった。真夏である。体も汗と汚れでべとべと、髪も自分でもわかるほど臭っている。
(嫌われちゃう……)
そう思った。
タンスからすけすけの下着を持っていった。
しんと静まり返った広い家の中は知らない家に来たみたいだった。
(宮部がいない……)
そのことが雰囲気を変えていたのだろう。ためらいが起こったが、漂う空気の中にたしかな宮部のにおいを嗅ぎ取って家に上がった。
シャワーを浴びていると宮部の手がそっと触れてくるような気がした。
滑らかな泡の石鹸を肌に塗ってゆく。
(ああ……いい気持ち……)
揉むように乳房を洗う。大きくなっている……。少しだが、裾野が広がっていた。
乳首をそっと指でつまむ。……心地よさ……指が宮部の唇と同化する。吐息が洩れた。
「肌の透けるパンツ。鏡の前に立つと、まだ薄いけれどようやく黒みを帯びてきた秘毛がかすかに見え、宮部の幻影があたしを包みました。突き上げる想いに堪らず乱暴に胸を掴むと、ちがう、こうじゃない、宮部のソフトな掌の感触を探しているうちに上気してパンツに手を差し入れていました」
指が秘核に触れてからはそこから弾き出されるような快感を求めて夢中になった。
(なに?これ……)
立っていられず床に崩れるように寝そべって秘部をこすった。
どんどんぬるぬるになっていく。
「あうう……」
突っ張ってもよじっても受け止められない激しい快感が絶え間なく体を貫いていった。
「やがてオナニーとしての絶頂が襲ってきました。初めてのオナニーでした……」
恍惚の中、宮部がのしかかっているような錯覚が起こった。