美少女スイマー 羞恥の水着-3
4
優勝者のオリンピック出場の可能性が高いことから、注目を集める水泳選手権。しかも、アイドル的な人気が出てきた速水絢奈が出場するということもあって、この日はマスコミの取材陣が殺到していた。
いつもなら、そんな様子に、ちょっとした誇らしささえ感じるようになってきた絢奈だったが、今日は違う。
「嫌だなぁ…」
絢奈はそう呟いてため息をついた。
予選出場のため、プールサイドに出てきた絢奈は、胸をギュッと抱きかかえた。ジャージを着ていても、その下に着ている恥ずかしい水着のことが気になってしかたない。何度、今日の選手権を欠場しようと思ったかわからなかったが、宮崎からは欠場することも禁じられていたし、第一、これまでがんばってきたチャンスを失いたくないという気持ちが強かった。
背泳は水中からのスタートになる。ギリギリまでジャージを着ていて、スタート直前にジャージを脱いで、すぐに水に飛び込めば、水着姿を見られるのはわずかな時間だ。きちんと胸をかばっていれば、見られることもないだろう。絢奈は何度もその段取りを頭の中でシミュレートした。
「5コース。速水絢奈。」
名前が呼び上げられ、最初のホイッスルが鳴った。絢奈はサッと水着を脱いだ。
こうした大会では見られない白い水着に、場内がどよめく。絢奈はできるだけ不自然に見られないように気をつかいながら胸を隠し、できるだけ急いでプールに入った。
「さあ、いよいよ背泳ぎ100m決勝戦となりました。」
実況中継のアナウンサーが告げた。水泳選手権は全国ネットのテレビで生中継されているのだ。
水着を気にしていつものようなタイムこそ出せなかったが、絢奈の実力は圧倒的で、予選、準決勝と順調に勝ち進んでいった。絶妙の動作でうまく身体を庇い、幸いにして、恥ずかしい姿を晒すことなくここまできている。
「速水選手、これで優勝すれば、大きく世界にはばたきます。」
アナウンサーが紹介する。しかし、決勝戦は強豪が揃っている。絢奈といえどもそう楽には勝てない。特に6コースの松崎玲子は、中学時代からの絢奈のライバルであり、注意しなければならない相手だった。そして、彼女は、絢奈のスイミングクラブが閉鎖になった時に、彼女の移籍を拒否したクラブの所属で、そのオーナーの娘である。その意味からも絶対に負けたくない相手だった。
ホイッスルが鳴り、選手が一斉にスタートを切った。
バサロから水面に上がって来た段階で、トップは松崎玲子。50メートルのターンを過ぎても、絢奈は玲子に少し距離を開けられてしまっている。普段なら考えられないことだが、恥ずかしい水着に気がいってしまう分、隙ができているのだ。
(負けられないわ!)
その思いが、とうとう絢奈の気持ちを吹っ切った。ラスト5メートル、絢奈は猛追する。
「アヤナ、アヤナ!」の声援が、会場を揺らした。実況中継もボルテージが上がっていく。
「あと3メートル、2メートル、1メートル、あっ!横一線に並んだっ!」
そして、絢奈の指先がわずかに早くゴールにつき、ホイッスルが鳴った。
大きな歓声があがる。
「やりました、一着は速水絢奈。これで、オリンピックへの切符が、また一歩近づきましたっ!」
スター選手の勝利に、実況中継のテンションも上がりっぱなしだ。
絢奈は、ゆっくりプールから上がり、いつものようにスイムキャップを脱いで、濡れた髪を垂らすと、大きく手を振って観客席に応えた。
その時、観客席の歓声が途絶えて、プールに静寂が訪れ、つづいてガヤガヤというざわめきが場内を満たしていく。
「…こ、この水着は、なんと、色っぽいというか…」
実況中継のアナウンサーが絶句する。
会場の様子の異様さに、絢奈はハッと気がついた。
濡れた白い水着から肌が透けて見えている。胸の頂点には乳首や乳暈のピンク色がくっきり浮かび上がり、お臍や、下腹部から股間の割れ目までがはっきりと見て取れた。しかも、その姿は、全国のテレビにも生中継で映し出されてしまっている。
「キャアッ!」
絢奈は思わず悲鳴を上げ、今にも泣き出しそうな顔でその場にしゃがみ込んだ。