プロローグ@-1
16歳の三原レイがファーストキスを体験したのは、2012年の10月だった。相手は中学時代の担任教師、渡部紀夫(わたべ・のりお)だ。
渡部の自宅に招かれて、チョコレートケーキでもてなされた。そして、渡部の学生時代の写真を見ているとき、頬にキスされた。
「くちびるを合わせていい?」
渡部は訊いてきた。
なぜ、あのとき、拒否しなかったのか?
きっと自分も渡部が好きだったからだ。
あれから1か月、渡部はあのことを怒っているのだろうか……。