四人の女-8
「ハイ、女の人にして貰ったの初めて、気持ちよかった」
「またいらっしゃい、でもお金がかかるね、家と電話教えて、久美が行ってあげるよ」
久美は弟を思い出していた。なんかこのまま客として関係するのが可哀相に思えて、つい言ってしまった。
「何だ、ニューグリーン、家から近い」
「そうなんですか、久美さんもニューグリーンにお住まいで」
「昨日引っ越したの、鳥取から」
「鳥取ですか、僕は島根県です」
「お隣同士ね、奇遇ですね。 日曜日空いてますか」
「ハイ、何も予定がありません」
「では日曜日、今日は有り難う御座いました」
その日は次々と客があって、久美はラストまで身体の空きがなかった。久美は鳥取の建築会社で建築現場が終わる度に打ち上げの飲み会をしてきたが、職人達が酔って久美に絡んでくるのに較べれば、キャバクラの客は温和しいもんだと思った。職人達には許せないことが多々あったが、クラブの客には何をされようとそれがここの仕事であるから。
「久美さん大変だったでしょう。明日から来てくれるの」
「佳枝さん、色々と有り難う、明日から来ます」
「そう、よかった。久美さん温和しいから一杯触られたでしょう」
「パンティーの中まで手を入れられました」
「そう、それっ、どうしたの」
「減るもんじゃないから好きなようにさせてやりました」
「度胸が良いのね、家はどちら」
「ニューグリーンです」
「途中まで一緒ね、タクシーで帰りましょう」
「電車はもう無いのですか」
「だいたい、いつも間に合わない、終電に」
「タクシー代バカになりませんね。駐車場はあるのですか店の」
「ありますよ、店の子なん人か自家用で来てるから」
「明日車を買おう」
次の日久美は粗品と書いた袋を五十枚購入して、五万円づつ入れ、久美と署名をしてそれを携え出勤し、ママの田代早苗に、
「今日から勤めさせていただきます。これは些少ですがお世話になる印です。お納め下さいませ」
あらかじめ聞いていた従業員の数だけの袋をマネージャに渡して、
「皆さんにお配り願えませんか、昨日お聞きしました人数分ありますから」
この最初の久美の行動が彼女のそれからの生き方の決め手となった。就職の挨拶に二百五十万を出した久美の気っ風にキャバクラ ホットプレイトの全員が度肝を抜かれた。
日曜日に久美は霜鶴和夫を訪ねた。家から徒歩で10分ほどの所のワンルームマンションで、住民の殆どが医大の学生であった。
「お早う、まだ寝てたの・・・・・・・ベッドじゃないのね・・・・・・・私も寝るから一緒に寝よう」
着ている物を脱いで下着だけになると久美は、和夫の起きた跡に横になった。
「和夫さん、早くここに・・・・・・・」
「女の人と・・・・・初めてでしょう」
「妹が相談があると横に入ってくる」
「妹さんって幾つ?」
「十八」
「大学生?」
「医大に合格したんだが、両親が金がかかるからって・・・・・」
「幾ら要るの入学に」
「八百万」
「私、貸してあげようか、ゆっくりと返して貰えばいいから」
「久美さん、お金持ちだね」
「夫と別れた慰謝料よ、持っていてもしょうがないでしょう、貸してあげる・・・・・・・・和夫さん暖かい」
「久美さん、そんなに締めないで・・・・・苦しい」
松原麗子 十九才 大学生
麗子は瀬戸瑠璃、綿田美成、因幡久美三人の女性が風俗界に足を踏み入れてそれぞれの職場で成長した三年目に登場する。