ヘタレですけど-5
「……へえ、土橋くんはよくわかってんじゃん」
沈黙を破ったのは、州作さんだ。
「二人は別れたんだから、オレが沙織ちゃんにどんなにアタックしても、大山くんには関係ないもんな」
そう言って、奴は沙織の手首を掴んで自分の方へ引き寄せ、俺達に、いや、俺に不敵な笑みを見せる。
「きゃ……」
「大山くん? オレ、遠慮しねえから」
そして、州作さんは沙織を連れて、表に出てしまったのだ。
◇ ◇ ◇
「ホラ大山、ジャンジャン食えよ」
歩仁内の声に我に返った俺は、反射的に奴の持っていた紙皿を受け取っていた。
山盛りになった野菜と肉。腹は減っているはずなのに食指が動こうとしない。
「……サンキュ」
それでも、俺が何かしら口に入れるまで、歩仁内に見張られていたので、仕方なしに肉を一切れ口に放り込んだ。
一から自分達で準備をした食事は、不味いわけなんてないのに、今の俺には味気ない。
所々が黒く焦げているカボチャやタマネギ、それに俺の好物であるトウモロコシですらも、砂を噛むような味気ないものだった。
すると、
「ホラ、こっちも焼けたよ」
よく通る、男にしてはやや高めの声がバーベキューコンロの方から聞こえて、ピクッと身体が強張る。
こっそり見れば、バーベキューコンロの前で、次々とみんなに焼けた肉や野菜を配る州作さんの姿が目に入った。
「ありがとうございまーす」
「わあ、おいしそう」
石澤さんや本間さんがキャピキャピはしゃぎながら、紙皿を受け取るのを見る分には心はいささかも動じないのだけど……。
「はい、沙織ちゃん」
「あ、ありがとうございます……」
州作さんが沙織の名前を呼ぶだけで、心の中はザワザワ落ち着かなかった。