ヘタレですけど-2
◇ ◇ ◇
俺と沙織が気まずい状態にあるせいか、俺達男衆と女性陣に別れて休憩を取る形になってしまったのは、少し前のこと。
俺達はタープの下に並べたテーブルで、女性陣はウッドデッキに腰掛けて。
明らかに不自然だけど誰も触れないから、男性陣と女性陣はそれぞれの輪で他愛のない話をするだけだった。
そんな中、一刻も早く沙織と話をしたいのに、全く身体が動けずに、ただただペットボトルのジュースをチビチビ飲むだけの俺は、みんなの会話にも入ることができずにいた。
「なあ、飲み物と肉、足りなくないか?」
ふと、州作さんが歩仁内にそう話し掛けた。
「そう? 多目に用意してたよな?」
「いや、明らかに足りねえじゃん。今日はすごい暑かったから、みんなたくさん水分採ったんだよ。それに海でみんな疲れてるから、絶対腹減ってるって」
でも、歩仁内はテーブル脇に置いてるクーラーボックスを見ては、
「うーん、間に合うと思うんだけどな」
と、首を傾げている。
この時の俺は、州作さんの狙いがわからないまま黙って二人のやり取りを聞いていた。
「足りねえって、絶対。会費はまだ余ってんだろ?」
「うん、まあね。全然余裕」
「よし、んじゃ買い出しに行ってくる」
そう言って彼は立ち上がる。
ボンヤリそれを眺めていた俺は、バチッと州作さんと目があってしまい、彼はそのまま俺にニッコリ笑いかけた。
刹那、ゾクッと悪寒が走る。
なぜ、身体がそんな反応をしたのか、それは次の瞬間に理由がわかった。
砂利を蹴るように歩く州作さんは、まっすぐ女性陣の輪があるウッドデッキに向かって歩いていく。
そして。
「沙織ちゃん、飲み物の買い出しに付き合って」
と誘う声が聞こえてきたのだった。