私が結婚しない理由(わけ)-4
長靴探しの話は本でしか話していないはずだ..!?
イトに直接自分から話したことはないはず...。いやまてよ、徳帯の集落の村人等から、あの事故後何年経っても時折、俺が加奈子ちゃんの遺留品やらが事故現場に残っていないかと鉄橋下流で探してるらしい事を聞いたのか..。
-[あいつ、まだ料亭岩倉の一人娘が恋しいんか、事故の時見つからんかったかたわれの娘の長靴、川に入って探してるしいんだわ(笑)ー。]
渡井は電鉄退社後、きちがいになったらしいと噂された事があるのだ...。(確かに何年経っても見つからなかった片方の長靴を探すなんて、きちがいな行動なのかもしれないが...。)
「アー、加奈子ちゃん...綺麗だったな~....。」
渡井がしみじみそう言うと、
「あんたぁー!嫁入り前に加奈、服脱がしたんかいっ?裸にして
抱いたんかい?!このっ!ドスケベ作家ぁ〜!(笑)」
イトが微笑みながら軽く平机をドンッと叩く。
「やっぱ!おばさん知ってるんだー!俺が本出してるの、誰に聞いたんよー?」
イトは得意気な顔をして、
「そんなもん、あんたは、息子みたいなもんやし、なんでも知っとるわ!」
「おばさ〜ん、あれは、フィクション〜、作り話〜、脱がすわけないでしょ〜に、まだ高校生だったじゃん、加奈子ちゃん...。」
渡井はとっさに嘘をついた....。遺影の美少女、加奈子の裸を彼は確かに見たし、裸の彼女を抱き寄せたし、胸や唇、美しい真っ白な肌の背中やお尻、うっすら毛の生え揃った彼女の恥部にもキスをした。でも彼女の方から、自らすすんで服は脱いだし、キスも愛撫も拒まなかったのだ..。
「あれから36年になるら~、あの子、生きてりゃ、あんたこの旅館、ついだんかい?」
「まあ、そのつもりだったよ、駅員続けたか、ここ手伝ってただろうね...。」