私が結婚しない理由(わけ)-35
終
旅館岩倉に一泊した渡井は、翌朝イトを車に乗せて、事故現場の得帯鉄橋付近へ行った。イトは自分の畑で育てている花を持って来ていた。二人で加奈子の遺体が見つかった現場付近に花と線香を供え、冥福を祈った。
「そう言えば山口さん、社長になったよね。生え抜き社長、すごいよね。」
「あの悪タレ駅員がの~たいしたもんだわ。山口くんはな、今も会社の接待や宴会にうちの旅館を使ってくれとるんよ...。泊まり客も紹介してくれたりしてな...。」
イトは高齢になり曲がって来ている腰を伸ばす格好をしながら彼に話し掛けた..。
「あんたも、ずっと加奈子の事、想ってくれてありがとな...。いつでも泊まりにきてや。あんた今日、昼ごはん食べてからお帰りよ..。」