私が結婚しない理由(わけ)-31
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大雨が降り続く中、渡井達は事故現場の得帯鉄橋手前に着いた。前方車両1.2両は、土砂崩れに押し流され横転し、増水した川に今にも流れ出そうな状態だった。後方車両にも負傷者がいて助けを待っていた。
「渡井くん、こりゃ救援が来るまで、土砂が埋まった車両には手は出せないな。取りあえず後方車両の負傷者を助けよう。」
駅長の指示を横で聞いていた渡井..。突然土砂の被った前方車両に突進し、素手で土砂を堀り起こしだした。
「渡井くん!よせ!救援を待とう。」
がむしゃらに無言で、土砂を堀る渡井を駅長は制止した。後から気がついたのだが渡井の両手は爪が剥げ、両手は血と泥が混じった状態であった...。