私が結婚しない理由(わけ)-30
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始発電車が出てから暫くが過ぎた。雨は一向に止む気配はない。次の列車は遅れか、運休だろうと渡井は考えていた..。
この大雨の中、接祖駅にやって来る車があった。車には保線係の工員と東得帯駅の駅長が乗っていた。駅長は駅に着くなり車から急いで降り、渡井のところに駆け寄った。雨に濡れた合羽を着たままの姿、ただ事ではない表情をしていた。
「渡井くん!さっきの始発、得帯鉄橋手前で土砂崩れが起きて、前方車両が流れたらしい。さっき本社に救護連絡したから、取りあえず先に僕らで状況確認に行こう。車に早く乗って!」
-さっきの始発の前方車両には加奈子が乗った...。
渡井は事故現場に向かう車に乗りながら、加奈子の無事を祈った..。あの後加奈子は後方車両に移ったのだろうか、それともそのままだったのか...。