最終話 空戦-4
「ゴホッ! ……しっかり掴まれよ!」
身体も搭乗員も満身創痍となった彩雲は、右主脚を衝撃で折りながらも辛うじて胴体で滑って着陸に成功した。
「少尉!」
機体の動きが止まるや否や、清水は風防を開けて右主翼の上に飛び出した。その際、縁に付いていた割れかけのガラスで手を切ったが、そんなことお構いなしに森口のそばに駆け寄った。
「少尉! 着きました、ニコルス基地ですよ!」
救急箱片手に駆け寄って森口の顔を覗き込んだ。森口は息も絶え絶えの状態で、顔面蒼白だった。胸部の血が一滴落ちるごとに森口の命をあの世に連れ去ろうとしていた。
「衛星兵、早く!」
全力でこちらに駆け寄ってくる数人の衛生兵をさらに急かしながら、清水は森口の頭を背もたれに倒して気道確保に努めた。森口が苦しそうに咳き込む。
「担架急げ―っ! 一飛曹、右脇を抱えてください。機体から少尉を降ろします!」
いち早く駆けつけてきた赤十字の腕章を付けた衛生上等兵が、素早く指示を出した。その後ろでは二人の衛生兵が、担架を担いで走ってきていた。衛生上等兵と協力して、森口を操縦席から主翼の上へ引っ張り出す。
「担架、遅いぞ! さぁ、せーの!」
衛生兵の掛け声で、さらに森口を主翼の上から遅れてやってきた担架に乗せた。もう森口は一言も喋らなくなっていた。