第七話 大艦隊-1
「なんてこった……」
西川上飛曹が、眼下に広がる大艦隊を凝視しながら呻いた。
昭和二十年が明けて三日目、偵察に出た三人の目には、彼らがこれまで見たこともない光景が写っていた。
「気を付けてください。最近、敵さんは張り切ってますから」
彩雲に乗り込む直前、整備兵の島田上等兵が三人に駆け寄ってきてそう告げた。年末からは一段と空襲が激しくなり、ルソン島近海でも米機動艦隊が発見されるなどしたため、ルソン島は常時警戒態勢を解けないでいた。いよいよこの島への上陸が近づいてきた証左であった。
「うむ。気を付けるが、こいつはアメ公よりも早いだろ」
森口少尉は微笑んで彩雲の胴体をコンコンと軽く叩いた。
「はぁ……」
島田は困ったような表情になって、頭をガシガシ掻いた。
「心配するな。昼には帰ってくるぞ」
森口は島田の肩を叩いて操縦席に乗り込んだ。続いて西川上飛曹、清水一飛曹がそれぞれ島田に、装備の状態や留意点を質問し、短いやり取りを行ってから機体に乗り込む。
「朗報、期待してます!」
島田は敬礼をしてから発進に巻き込まれないように安全圏に退避し、いつものごとく機体が雲の切れ間に見えなくなるまで見守った。