あなたは調教士（２５）-1
翌日‥‥。
あなたは、Ｘ十字に磔の全裸のルリアの前に、ミドリ、そしてジャニスさんと三人で立っていた。
高身長の女戦士のボディは、特にそのＯカップ爆双乳は、これまでと変わらず、まるで水平の小山のように驚くべき大きさと角度で空にグンと突き出され、しかしまた可憐な蕾をそれぞれの頂に乗せ、あなたの手を待ち受けていた。オートパームを使うのは、やめた。また、Ｏカップ――としたが、ここのところの調教で、大きくなっているように見えていた。再測定が必要だろう。だが、それは‥‥。
（成し遂げるべきことを、成し遂げてからだ――！）
あなたは、自分に強く言い聞かせた。成し遂げるべきこと、すなわち
（お楽しみ身体測定はナシだ‥‥！）
コンジャンクションの日は迫っており、日程的に二・四と
ただ、ひとつ、希望の曙光は見えてきていた。もっともそれはまず、昨夜、あなたに諦めを与える冷厳な現実として、与えられたものだったが‥‥。
「わたしはおまえに、謝らねばならない‥‥」
先刻、Ｘ十字に上がる前、着衣のルリアは、あなたに泣き腫らした跡のような目で言ってきた。あなたは、黙っていた。
「おまえの意志を確かめもせず、この世界へおまえを強引に召還した。そして‥‥」
そこでルリアは、ウッと呻いた。あなたは、自分が彼女の言葉を継ぐべきだと思った。
「帰還は、できないことか‥‥」
ルリアは、大きく目を見開いた。
（何故知っている――？）
と、その端正な驚愕の
「‥‥‥‥」
あなたは話し出した。昨晩‥‥。
いつになく思い詰めた面持ちであなたの部屋を訪れたミドリとジャニスさんから、ベッドに入る前に、そのことを聞かされたのだった。
現在のオイオの技術では、召還装置は一度の動作でメモリのコアが壊れてしまい、それによって装置そのものが使えなくなること。本来は備わっている帰還機能も、それにより使用不可能になってしまうこと‥‥。
「すまん‥‥。わたしは、怖かった。真実を告げてしまえば、どこかに行ってしまう気がしていた。おまえが‥‥」
‥‥ミドリとジャニスさんは、帰還機能は一度きりだが正常に作動するとルリアに聞かされていたこと。特にミドリは自分でもそう考え、あなたにもそのように言っていたが、彼女の調教期間中に、ルリアから真実を告げられたこと。他言無用を命ぜられていたが、ルリアの調教の行き詰まりのプレッシャーのなか、思い余ってそれを昨日ジャニスさんに言ってみたら、あなたに言ったほうがいいと言うので、ふたりしてベッドで伝えたこと。
「ルリアさま、ごめんなさい‥‥‥‥」
消え入りそうなドリーに、ルリアは優しく声をかけた。
「いいんだ、ドリー。いずれは彼にも伝えねばならぬことなんだ。――わたしは、おまえの口から言わせたかったのかもしれん‥‥。わたしは、卑怯者だな‥‥」
ルリアはしかし、沈痛な表情ながらも、あなたとふたりに、しっかりと言った。
「現在のオイオには、帰還の技術はない‥‥。だが、おまえが帰還できる方法は、実は、ある。本当だ‥‥」
「え？」
あなたたち三人は、顔を見合わせた。昨夜来、覚悟を決めていた――と言えば嘘になるが、どうにもならないという事実の前に諦めざるを得なくなっていたあなたは、心底驚いていた。ルリアは続ける。
「スガーニーだ‥‥」
知っている情報が、頭のなかを錯綜していた。目の前のルリアは、まだあなたが知らない情報を持っているようだった。ジャニスさんとミドリも、顔を見合わせていた。ルリアの頭のなかは彼女たちも、知らないことが多いのだ。
「――スガーニーにある転送装置は、それができるんだ。わたしは、それが間違いないことを確かめてから、おまえを召還したんだ」
ルリアは力強く言い切った。スガーニーにも同じような装置があるということじたい初耳だったが、それが本当なら、帰還への光明のように思えてきた。いや――光明というより、それが唯一の手段のようだった。
「スガーニー側には、条件として打診しておいた。われわれオイオが勝った場合、その転送装置を調教士帰還のために使わせてほしい、と‥‥」
「それで――？」
と、これはミドリ。あなたの質問でもあった。
「‥‥向こうは、条件を呑んだ。ちゃんと確約を取った。――われわれが勝てば、“‥‥‥‥”、おまえは元の世界へ無事に帰還できる」
ルリアはあなたの目を見て、きっぱりと確約してくれた。
「やったあ‥‥」
と、またミドリ。これもあなたの心の声でもあった。
あなたはもちろん嬉しかったが、気になることもふたつほどあった。ひとつを尋ねた。
「そんな、こっちに都合がいいだけの条件を、向こう側‥‥その、スガーニーは‥‥あっさり呑んでくれたのか？ 好意的に‥‥」
「あ‥‥」
単純に嬉しがっていたミドリも、その点に気がついたようだった。ジャニスさんは、あらかじめ気づいていたのかどうか、ルリアの話を、慎重に聞き分けようとしていた。ルリアは、ゆっくり首を横に振った。
「――代わりに、向こうの言い分も呑まねばならなかった。コンジャンクションのお互いの参加者、人数は、コンジャンクションの三日前に、スガーニー側が決める、と」