ルームメイト-3
アキオはただ力の加減がわからないのだ。
ただ経験のなさからくる焦りと、理性はおろか思考すら吹き飛ばす極度の興奮とが相まって、結果として摘まんで捻りあげるかたちとなってしまったのだろう。
だがその瞬間、視界に飛び込んだ光景が、若く性急な情欲にさらなる火をくべたらしい。
眉根を寄せて苦痛に呻くその容貌に、アキオは思わず唾を飲み込み、うなじの毛を逆立たせていた。
確かに―――それはぞっとするほどに美しかった。
もともと愛くるしい顔立ちではあった。
線の細いところはあったが、その表情はいつも溌剌としていた。
ところが、いま唇を噛んでそっぽを向いた横顔は、すぐそこに迫る恐怖にうち震え、すぐにでも手折られそうな儚さをみせていた。
それは艶めかしくさえあった。
まるで女性のような、いや女性ではないからこその中性的な妖しさがそこにあった。
(く、くそ……)
もちろんそれを望まないが、ナオキは本能的に自分の脆弱な部分を知ってはいた。
だからこそ嫌い抜き、認めまいとし、克服しようとした自分の一面―――だが運命は彼を裏切り、その身は圧倒的な暴力によって蹂躙されようとしていた。
「……我慢しろ」
荒い息をつきながら、アキオはその一言を吐き出した。
命令的でありながら、その口調はむしろ懇願に近かった。
それだけ言ったあとはまた無言のまま、Tシャツに潜り込ませた腕を引き抜き、裾を掴んで乱暴にたくしあげた。
抱き締めれば折れてしまいそうな細い胴まわりに肋骨がうっすらと透けて、腹部には小さな臍が呼吸にあわせて上下している。
わずかに窪んだ鳩尾と硝子細工のような鎖骨のあいだ、青白くさえ見える胸部にふたつ、つい先ほどまで太い指でねぶりあげていた可憐な乳首が淡く色づいていた。
引きちぎるほどの勢いで、彼は皺くちゃになったTシャツを華奢な半身から引き剥がし、剥き出された裸身を貪りはじめた。
「うう……あ、ああ……」
執拗に接吻を繰り返す唇が脇腹を這い上がってくる。
臍の周囲を舐め回され、鳩尾にもしつこく愛撫を浴びてから、口と片手で両の乳首を同時に責め立てられた。
「うっ……あくっ」
ナオキは背筋を弓のようにしならせて反応した。
屈辱に美しい顔が歪んでいた。