ルームメイト-2
「な……」
目を血走らせたアキオがのしかかってきた。
体格差があるので、殆ど覆いかぶさっているようなものだった。
頭上で交差させた両手首を、片手で抑え込まれて自由を奪われた。
両腕に力を込めてもどうにかなる腕力はなく、かえって細い手首が折れてしまいそうだった。
「おい、いい加減に……んむっ!」
残る片手で顎を挟まれ、次の瞬間、抵抗の間もなく噛みつくように唇を奪われてしまっていた。
「んん、んむんん……」
驚愕のあまり、ナオキは目を大きく見開いていた。
顔をそむけようにも、顎を掴まれて横を向くことすらできなかった。
足をばたつかせようとして、ひと回り以上も大きな相手の体格が、もう両膝を割るように密着していることに気がついた。
そのまま上半身が覆い被さり、ナオキは身体をよじることもできなくなった。
引き結んだ口許を、分厚い唇が何度も覆う……。
「ん、んん……」
ナオキは唇を引き結んで応じないが、相手のことなど意にも介さず、アキオは一方的な接吻を浴びせ続け、散々にを弄んでからようやく唇を解放した。
「い、いったい、なんのつもり……」
と言いかけてナオキは戦慄した。
ざらつく舌先が頬から耳元へ、首筋から鎖骨の周辺へ……。
顎を挟んでいた方手はTシャツの裾に入り込み、滑らかな肌を確かめるように撫で上げてくる。
「ちょ、ちょっと」
何とか勘違いであって欲しい……。
そんな淡い期待が不安に、そして確かな恐怖へとかわっていった。
背中から脇腹にかけてをまさぐる掌が、腋の近くまで這い上がったとき、その太い親指が薄い胸板にある小さな突起に触れた。
アキオはすぐさま反応した。
ゴツゴツとした掌を絹地のような胸元に滑りこませ、探り当てた乳首を指で挟む。
「痛っ!」
絞り出すような小さな悲鳴に、アキオはぴくりと指の動きを止めた。
苦痛を与えようとしたわけではないらしい。
追い詰められたような表情が、それを物語っていた。