おっさんの純愛-3
「ぬ?」
スオウはギクリと固まった。
「オレも興味あるし、ソレ。だから勝負しよ?」
立派な姫身分のキャラだが、武術においてはスオウやアースよりも強者だ。
力任せな技が多い2人に対して、素早く軽いフットワークで華麗な技を繰り出す。
そんなキャラに指南を受けて大分腕を上げたスオウだったが、今の疲れきった状態では勝てる自信が無い。
「ぬ。時間だ」
スオウは冷や汗を流しつつそそくさと広場から逃げる。
「あ!ずりっ!ちょっ!団長ぉっ!!」
キャラの雄叫びを背中に受けながらスオウは懐を軽く握り、緩く微笑んだ。
『甘いものお好きなんですか?』
ミウと再会したのは城下町から大分離れた場所にあるスイーツ店だった。
酒も好きだが甘いものにめっぽう目が無いスオウは、各地のスイーツ店を巡るのが休日の楽しみなのだ。
そこで、ミウに再会した。
『うむ』
何と答えたら良いか分からず、無愛想にそれだけ答えたら大爆笑された。
『あっはっは!団長さんったら!照れなくても良いよ!』
どうやら顔が赤かったらしく、ミウはケタケタと大笑いする。
(ぬ……元気そうで何よりだ)
事件後、何もかも失って茫然自失となっていたミウを知っていただけに、豪快に笑われようがスオウには嬉しかった。
朗らかに笑うミウの横でコリコリと顎を掻いていたら、ズボンの裾をクイッと引かれた。
『ぬ?』
『おじちゃん、コレおいしぃよ』
足元に目を向けると、ちっこい女の子がちっこい手でケースに並ぶケーキを指差していた。
『やだ、リオっ』
『む。どれだ?』
慌てるミウをスルーしたスオウはリオという名のちっこい女の子が指差す場所に目を向ける。
『コレ、コレ』
それはちっこいリオにとっては高い位置にあり、リオはピョコピョコと跳ねていた。
『む』
指先がぶれて何を指差しているか分からず、スオウはリオをひょいっと抱き上げた。
『きゃ♪』
『で?どれだ?』
驚きの笑顔で見上げるリオの目には、真剣な目でお菓子を眺めるスオウの顔が映っていた。
ぱあっと顔を輝かしたリオはショーケースに目を向けて元気よく指を突きつけた。