おっさんの純愛-2
「生活には慣れたか?」
「おかげさんでね。娘も友達できたし。ホント、団長さんに感謝だよ」
そんな会話をした後、ミウは来た時と同じ様にパタパタと食堂へ戻って行った。
その背中を見送ったスオウは、さて素振りでも……と向きなおり、ギクリと固まる。
「何?何?今の食堂のミウさんですよね?3ヶ月位前から働いてる」
「確か、北の外れの村から来たっつう……んだよ?妙に親密だな?おっさん」
そこに居たのは言わずと知れたアースとキャラの2人。
2人はキラキラと目を輝かせてスオウを見つめた。
「む。ミウ殿の村は土砂崩れで壊滅してな。娘と2人途方に暮れておったので連れてきた。丁度、食堂の職員を募集しておったし」
「ああ……」
長く続いた雨で地盤が緩み、一気に流れた土石流。
土砂は川を流れ、麓の村を襲った。
あっという間の出来事だったそうだ。
その時、生き残っていた中に今の女性ミウは居た。
泥だらけのまま、まだ幼い娘を抱いて土砂に埋もれた村をジッと見ていた。
茫然とした視線の中に強い光が見えた気がして、暫く目が離せなかったのをスオウは強く覚えている。
「で?お礼に何もらってんだ?」
「……ぬ?」
当時の事を思い出していたスオウは、はっと現実に戻り懐をきゅっと握る。
「……秘密だ」
「んだよ?隠すなよ」
不審に思ったアースが手を伸ばすと、スオウはその手首を軽く掴んでクルリと捻った。
「げ」
どたーん
まさかそんな行動に出てくるとは思っておらず、油断しまくっていたアースは勢いに乗せられて呆気無く背中から地面に叩きつけられる。
「ってぇな!」
「ふっふっふっ知りたければ儂と勝負だ!」
「望む所だ!」
あっという間に始まった2人のバトル。
嬉しそうに剣を合わせる男2人から離れたキャラは、これみよがしに溜め息をついたのだった。
この勝負、秘密を守らんとするスオウの気迫によりアースの負けとなった。
「くっそぉ」
悔しがるアースに対してスオウは高らかに笑う。
「ハッハッハぁ儂もまだまだイケるなっ!」
とか言いつつ大分息が上がっているのだがそこは気づかないフリをする。
「じゃ。次オレね」
そこにキャラが愛用の片刃の長剣を抜きながら近づいて来た。