第四話 靖国への誘導-1
いつにも増して偵察を行う両目に力を込める。敵艦隊を、できれば空母を擁する大艦隊を見つけたい。かけがえのない友人のために……!
「え……?」
足元を風が吹き抜けていった。呆然として立ちすくむ清水をしり目に、杉山は話を続ける。
「だから、形見に持っておいてくれ」
杉山は切り取った階級章を、清水の手を取って胸ポケットに入れさせた。
杉山の所属する部隊は、第二〇一航空隊。特攻第一号の敷島隊を出撃させた部隊だ。杉山が特攻隊員に選ばれてもなんら不思議ではない。
「杉山君……」
両目から溢れだした涙が落ちて、足元の地面に点々と黒い染みを作る。そして、せきを切ったように大粒の涙が流れだした。
「なんでお前が泣くんだよ」
こちらも涙声になりながらも杉山は清水の背中をさする。
「杉山君! 絶対、僕が艦隊を見つけて誘導するから!」
顔を上げた清水は嗚咽を堪え、声を喉から絞り出して言った。
「あ……ああ!」
その言葉を聞いた杉山ははっきりとした声で返事をした。彼の表情は笑顔だったが、両目からは涙が一筋、夕日に照らされて光っていた。