悔恨の選択 ★-1
美桜が恐れつづけた日曜日の朝を迎える。
このタイミングが来ても、美桜は戸惑い判断出来ぬ状態にあった。
再びあの男に遭う事が“何を意味”するのか、解らぬ美桜でも無かったのである。
それでも指定の時間、美桜はそこに居た。
警戒する心情は身に付ける衣類に表れ、ジーンズにデニムシャツと初夏の陽気には重々しく感じる服装であった。
「!」
美桜が指定の場所に表れると、男は待ちかねた様に目線を合わせる。
そしてついて来いと言わんばかりの動きで、美桜を先導し足早に歩き始めるのである。
(いったい何処へ?)
美桜の不安を余所に、歩く男との距離はどんどん離れて行く。
(どうしたら…… どうしたらいいの?)
ただ普通に歩くだけでも美桜の足取りは重かった。
それは精神的な不安から来る重圧のみならず、破瓜の痛み癒えぬ状況からもたらされる肉体的苦痛からでもあった。
狡猾な精児は集合商業施設と最寄駅を結ぶシャトルバスに乗り込む。
この状況を利用し美桜が第三者に、“この日”を告げていないか確認する考えであったのだ。
もちろん精児の計画そのものは、千章流行と比較すればずさんな領域を出てはいない。
しかしこの場合、美桜が第三者に告げていないと言う一点において、全てが成立してしまうのである。
最寄駅に到着すると更に精児の移動は加速し、駅の改札をくぐり電車に乗り込む。
美桜は一定の距離感をとりつつも、男の後を付いて行くしかなかった。
その美桜に精児は移動中の車内で初めて接触を試みる。
「これをよく見るんだ」
すれ違う様に一瞬歩み寄り囁くと、紙片に書かれたメッセージを手渡す。
そこにはふたつ先駅南口にあるコインパーキングまでの略図と、乗車を促す車種とその旨が書き記されていた。
酷く稚拙でずさんな計画ではあったが、受け手の“選択”によって結果は決まってしまっていた。
精児にとって短絡的な欲望に身を任せた暴挙も、美桜を選択した時点でその後の運命が決まっていたのである。
午後一時
「もう一度、もう一度だけ、マンコさせるんだ。そうすればデジカメで撮ったもの全て返してやる。嫌なら降りて警察に通報すればいい」
移動の車中において、男は脅え震える美桜にそう伝える。
受け入れがたい条件を半ばなげやりに、たんぱくなまでに伝える男に少女は混乱する。
美桜が迷い迷い続けるうちに移動を続ける車は、郊外にある古びたラブホテルに着いてしまう。
「良いんだぜ? 逃げても…… 逃げて、逃げて、逃げればいい。でもなあ? そしたらこれが、お前の通う中学にばら撒かれる事になる」
言い終えるより早く精児は、数十枚に及ぶプリント用紙を車内にまき散らすのである。
「あっ、あぁぁ…… お願いです。止めて…… 止めて下さい」
男が口にした通り“結城美桜と認識出来得る”無数のそれは、幼気な少女の心を呪縛するに十分な効果を発揮する。
…… …… …… ……
…… …… ……
…… ……
……
もう肉体的な拘束の必要な無かった。
清潔感のある一室…… とは言い難い、古びたラブホテルの一室。
天井にある一点を見つめる美桜の瞳は、下半身に走り続ける鋭い痛みと共に不規則に揺れ動く。
大きく割られた両脚狭間には、野太い陰茎が抜き挿しを繰り返し美桜の清らかさを削り取る。
荒い息遣い、淫らな言葉、拷問の様な痛み…… その全てが少女の心を麻痺させはじめる。
「おいっ! もっと、こうケツを突き出す様に持ち上げるんだ!」
ぼやけはじめた意識の中に、遠くから美桜を縛る声が届く。
(ん? そうすれば…… もう、痛いの止めてくれる? 言う事聞いたら…… )
…… …… ……
…… ……
……
「うおぁっ、良い具合だぜ。それに…… 咥え込んでるのが良く…… 」
薄暗いはずの室内に、閃光と電子音が繰り返し続く。
初めてのセックスがレイプ……
大きく歳の離れた男の歪な欲望によって引き裂かれ貫かれた結城美桜。
この日破瓜の痛み癒えぬ幼気な膣には、焼き付く痛みが走り続ける事になる。
それは結城美桜にとって、“終わらぬ明日のはじまり”であった。