好き…だぁーい好きなんだからっ!-5
人気のない海、遊び疲れた私と絆はゆっくりと歩く。
「いやー、とっても楽しかったねっ!」
「ホント…。」
「お土産も買ったし、最高だね。」
「最高…かぁ。」
「?」
そう言うと彼は、突然背後から私を強く抱き締め。
「!?」
「あはっ、あはは…戻ったっ!」
「きず、な?」
「戻った、やっと…やっと、僕の大大だぁーーい好きな、杏に。」
「……。」
今まで溜まっていた物を吐き出すように、泣きながら口にする絆…。
「……今でも、不安は消えないよ。でもっ!もう大丈夫!…もう何が来ても乗り切れる、そんな気がしてきたの、だって今まで私達そうやって乗り越えてきたんだから。」
「杏…。」
私たちの先に見える海、それはこれからの私たちの未来そのものに見えて仕方がなかった
無論良い意味で。
それから私たちは高校を卒業し、私は予定通り女子大へ行き、彼は美術大へ入学した。私を養う為により力をつけると…。そんな彼を暖かく応援する彼の家族。
彼を想い続け、運命の成人式を迎え、一時期は見れないと悲観していた大人の彼を見る事が出来た。
お互い大学を無事に卒業し、私は母の知り合いのあの喫茶店で働いている、持ち前の明るさとその耐える事のない元気に、客店員共々心から高く評価し、来年にはリーダーを引き受けてくれないかって声を掛けられるくらい。
仕事に精を出し、うっすらと彼を想い浮かべると、彼が突然やってきた、そして。
「杏、迎えにきたよっ!」
「絆……。」
自宅に彼を招き、両親に結婚の承諾を求める、その真っ直ぐな眼差しで私への高校の時と変わらぬ想いを強く語り。
前から私と彼の事情を知っている母、いつの間にか彼を受け入れた父。この日を待っていたかと言わんばかりに誠実に。
「こんな、やかましい娘だが、宜しくお願いします。」
「もぅ、堅苦しいわねぇー。絆クン、娘をお願いね。」
「はいっ!僕の大切な杏サンの笑顔を、僕が一生に掛けて護りますっ!」
こうして私達は結婚した、そこに菫や東堂クン達の姿もあり、惜しみない祝福を受けた。
そして私は今、彼が叔父サンの友人に後押ししてもらい、設立したという絵画教室で、そこに通う子供達に、絵の楽しさ素晴らしさを知って貰おうと、日々夫婦共々働いている。
喫茶店では働き続け、彼も普段は印刷会社に勤め、生計を立て。絵画教室それに美術館設立に向けて、コンクールや個展は欠かさず参加。
前向きな吉報は未だない、教室もとても小さい、でもっ!
私は今も、とっても幸せです……。
終
長い事ご愛読、有難うございました。