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白色金 (white gold)
【ファンタジー 官能小説】

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追憶の遊戯-1

 11月X日
「ねえっ? ねえってば!? お兄ちゃん、どうしたの?」
ぼんやりとした意識の僕を愛らしい少女の声が現実世界に引き戻す。
 
 あの日
磯崎家に再び忍び込み“恵利子の秘密”を持ち出したあの日。
帰路を急いでいたあの時、僕は恵利子の妹である“汐莉ちゃん”の危機を救う事になる。

結果的にそれは僕と恵利子の仲を急速に接近させていく事に…… いや正確には、“僕と磯崎家の人たち”の仲を急速に深めさせていく事となった。

《それでどうだろう、不易くん? あらためてと言っては何なんだが、今週末にでも家で食事をと思う。正直言うと汐莉が君の事を心配していて、是非とも元気な姿を見せて安心させてやってほしいんだ》
汐莉ちゃんを庇い負傷した僕を見舞った際に、父親が口にした言葉そのままに週末の夕食に招かれる。

 そしてその関係は一過性のものに止まらず今日まで続いているのだ。


「ねえっ? ねえってば!? お兄ちゃん、どうしたの?」
ぼんやりとした意識の僕を愛らしい少女の声が現実世界に引き戻す。

「ごっ、ごめんね汐莉ちゃん」
僕は不意に現実世界に引き戻されドギマギしながらそう応える。

週末夕食に招かれた僕は楽しいひと時を過ごした後、本来追い求める目的へ向かっていくはずであった。
しかしその後も磯崎家に招かれて行く内に、僕の中で何かが変わりはじめようとしていた。
その変化の様なものは汐莉ちゃんにもあらわれ、不思議な同調を見せ始めて行く事になっていく。

この日磯崎家を訪れた僕は、何故か汐莉ちゃんと二人きりの時間を過ごす事になる。
本来であれば少なくとも恵利子と母親の香さんが同席し、午後のお茶の時間を過ごすべく招かれたはずであった。

ところが約束の時間に訪問してみると、汐莉ちゃんひとりが招かれた僕の為に留守を守ってくれていた。
どうやら急用が出来た事を自宅に連絡してくれたらしいのだが、すでに僕がこちらに向かっていた為、止む無く汐莉ちゃんが伝言役をかって出てくれたらしい。

それにしても10歳の少女をひとり残して、外出せねばならぬ急用とは如何なるものかと思ったが、さしあたっては不用心でもあるので恵利子たちが帰宅するまで待つ事にした。

「お兄ちゃん、汐莉と遊んでくれる?」
そう言って小首を傾げる少女は、幼いながらもとても愛らしく僕は共にゲームに興ずる事にした。

しかしそれも時間が経つにつれ徐々に辛くなり、本音を言うと煩わしくなってくる。
何と言っても相手はまだ子供、全く持って限度と言うものを知らない。
もっともその原因の一部は僕にあり、汐莉ちゃんが飽きない様に微妙に勝敗をコントロールしていたのだ。

「ねえ、どうしたの、お兄ちゃん? やっぱり汐莉だけだとつまらない?」
ぼんやりとしている僕に核心を突く少女の言葉。
わずか10歳の少女に気を使わせてしまい、正直気恥ずかしくなる。

(いったい僕はなんて奴なんだ。この少女は訪ねてくる自分の為にひとり家に残って、留守番役をかって出てくれたのではないか!)

「あっ、違うんだ。家でもゲームやり過ぎてて、ちょっと肩がこったかなと思って」
汐莉ちゃんの気持ちを察し、無難にやり過ごそうと試みる。

「へえ、そうなんだ? あっ、それだったら良い物あるよ! ちょっと待ってて」
そんな僕の気持ちが功を奏したのか、汐莉ちゃんは嬉々として何かを取りに行く。


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