I'M A LOSER-5
「どうせ俺は彼女がナンパされていても助けられない、不釣り合いだってバカにされるような情けねえ男だもんな!
州作さんが助けに来てくれてよかったな、だからそんなヘラヘラ浮かれてるんだろ?」
「何言ってるの、倫平……」
「州作さんはかっこよかったなー。
まるでホントの彼氏が助けに来たみたいだったよ、沙織と似合わねえって言われた俺とはえらい違い」
まるで自分の口じゃないみたいだ。
刺のある言葉に沙織が涙目になっても、罪悪感なんてまるでなく、むしろ無神経な沙織を責めたくて仕方なくなっていた。
ずっと、ずっと、俺と沙織はうまくいってるって思ってたのに。
いつも一緒で、楽しく笑い合っていたのに。
なのに、州作さんが現れたことで、俺達の間に簡単に溝ができるなんて。
いや、もともと俺達の間には最初からそれがあったのかもしれないな。
沙織は俺なんかと付き合うレベルの女じゃなかったんだ。
それを好きって気持ちだけで見ないフリをしないただけで、きっと俺と沙織の間には埋められないくらいの溝が、最初からあったんだ。
──もう、これ以上惨めにさせないでくれ。
「……沙織」
「え……?」
もともと付き合い始めた時だって、沙織は打算で告白を受け入れてくれたんだ。
俺の告白を断れば、俺の友達である修とも疎遠になってしまう、沙織はそれが嫌なだけだったんだから。
それでも、沙織が自分を好きになってもらえるようがんばったけど、これ以上がんばったって沙織には次々男が寄ってきて、寄ってきた男は俺を見て“似合わねえ”なんてバカにして。
沙織を愛してる気持ちに揺るぎはないけど、男としてのプライドだってある。
「もう、俺なんかと無理して付き合わなくていいよ」
「な、何言ってるの……?」
振り払われたにも関わらず、沙織が再び俺の身体に触れてこようとするから、俺もまた、その手を再び振り払った。
行き場を失った沙織の手は、
「……沙織、別れよう」
俺の言葉と共に、パタリと落ちた。
小刻みに首を横に振る彼女の瞳はみるみるうちに涙が溢れていき、熱い砂浜に落ちていく。
「や、やだ……! 別れたくなんてないよ……!」
かろうじて出る沙織の声は弱々しくて、ほとんど聞き取れなかった。