レ-6
「迎えに来た。一緒に帰ろう」
私の顎を持って視線を合わせる。
聞いたこともないような優しい声で
そんなことを言われたら、私は何も言えなくなる。
「響子。迎えに来た」
豪の言ったその言葉に
部内が色めき立つ。
「豪」
「ん?横浜がいいのか?」
ううん。
ううん。そんなことない。
この仕事を片付けたら、真っ先に行こうと思ってたの。
喉まで出かかった言葉が
喉に張り付いて上手く言えない。
「響子。帰ろう」
私のあごをなでて困ったように笑いかける。
「豪」
「響子が居ないと、ダメなんだ」
離れていたのは数日なのに。
私たちはお互いに離れていた時間を埋めるかのように
ギュッとお互いを抱きしめた―――