レ-5
契約書の確認を終えて
石島さんに最終確認をしてもらおうとプリントアウトして
席を立ったところで
廊下がざわついているのに気がついた。
「何かあったの?」
廊下側に席のある後輩に顔をしかめて確かめたら
外食営業部のドアが開いた。
「豪・・・?」
スーツに身を包み
私が最後に見たときよりも髪を短くカットしていた。
その髪を見たこともないように綺麗にセットして
スーツを着ても隠しきれないその大きな身体から
熱いオーラを解き放って
ゆっくりと部内を見渡した。
私を見つけるとじっと見つめられて身体が熱くなる。
周りのざわつきなんか耳に入らないかのように
ゆっくりと私に向かって歩いて来る。
私もそこから一歩も動けなくなった。
ほんの。ほんの数日見なかっただけなのに。
豪がいないと、私の1日が無意味のようで
むなしく感じられる。
「豪」
小さくつぶやいた、その言葉に、豪がピクリと反応した。
音もなく、その場に立ち尽くしている私の目の前に来て
ゆっくりと立ち止まった。