耀子のアヴァンチュール-2
2.
博は、地下鉄の築地駅を下りると、聖露加病院を目印に路地を辿った。
由美子の母の耀子から電話があり、お魚をご馳走したいと言ってきた。
由美子が世話になっているので、シドニーに戻る前に、日本の魚料理を思いっきり食べさせたいと言うのである。由美子が気にするといけないので、会社に行っている留守の間に、時間を取って欲しいと言う。
約束の築地の魚清は、博も前に行ったことがあった。
さすがに世界一の魚河岸を控えているだけに、食べ応えのあるものを食わせてくれる。
何やら耀子の下心を感じないでも無かったが、程よく油の乗った中トロの色艶が目に浮かぶと、その時はその時だとたかを括ることにした。
魚清の玄関は、水を打ったばかりの敷石が濡れている。玄関脇に、真っ白な塩が盛ってある。
小さな水溜まりを避けながら玄関を入ると、ハッピを着た下足の男が控えていた。
仲居に案内されて廊下を進む。
庭を右手に見ながら渡り廊下を進むと、離れに達する。
この料亭は結婚披露宴をよくやるので、新婚一夜を過ごすカップルの為に、用意がしてあるのだろう。
「お見えになりました」
仲居が声を掛けて襖を開けると、浴衣姿の耀子が、ちゃぶ台の上に肘を突いて、湯飲みを両手に挟んで座っていた。
「お呼び立てして、ごめんなさいね」
茶碗を下に置くと、立ち上がって博を迎える。
「これ気持ちばかり・・」
耀子が案内の仲居に心づけを握らせると、「有り難うございます」と頭を深く下げて出ていった。
「博さん、お風呂どう。汗を流すと気持ちいいわよ」
博の返事を待たずに、耀子は開きから浴衣を取り出すと、今入ってきた部屋の入り口脇の風呂場に入って行った。
博は案の定と思ったが、暫く愛情交換から遠ざかっていた男根は、早くもムクムクと動き出した。
昼間の明かりの中で湯に浸かるのは、旅行中の楽しみの一つだ。世の人々が忙しく働いている時間に、のうのうと透明な湯に体を浸し、思い切り伸びをすると、幸せだなあと思う。
3.
「お背中を流しましょう」
声と一緒に、耀子が風呂場に入って来た。
「いや、あのう・・」
躊躇う博からタオルを取り上げると、せっせと背中を擦り始めた。
目の前の鏡の中に、浴衣姿の耀子がちらちらと揺れる。
湯に濡れない様に裾を絡げているので、白いふくらはぎが丸見えだ。
擦りが腰の方に下りてくると、必然的に耀子の姿勢は中腰になり、浴衣の裾はますますはだけてくる。
(パンティーを、穿いていないみたい)
裾のはだけた隙間から、ちらちらと腿がのぞく。
博には、どうも耀子がわざと挑発しているように感じられた。
男根はいやが上にも充血して、タオルを取り上げられた博は手で覆うが、隠し切れるものではない。その気になれば、耀子の目にも当然見える筈だ。
耀子の手は、脇の下を回り込んでかなり前にまで伸びてきた。博は必死で男根を押え込んだ。
オケで湯を汲む音がして、首筋にしょぼしょぼと湯が流れる。
湯の流れを追う様に、耀子の手のひらが、博の肌を滑っていく。
首筋から、貝殻骨の下へ、既に湯の途切れた肌を、執拗に撫で回す。
博は、再び熱い血をたぎらせらせて怒張する男根を、手で覆い隠した。
再び湯が掛けられるものと博は予期して待った。
背後に耀子の気配がするが、動きは起きない。
博は男根を手で押し下げながら、そっと首を回して後ろを見た。
耀子の大きな尻が目に入る。