ヒカリゴケ-2
ふたりの報告を聞いて、本隊ではヒカリゴケの駆除を決めました。
「その星の生態系を、勝手に壊すのは如何なものか」という意見もありましたが、実際にそのコケを見てみると、「どうやらあれは、あの星にとっても良くないものじゃあないのか」という意見で一致したので、駆除は実行に移されました。
直接星に下りていく案は、先住民との衝突があるかもしれないし、何より彼ら自身、光り物にはできるだけ近づきたくなかったので、却下されました。
その代わり、彼らは強力な超音波を発することができたので、毎日毎日、その星の上空高く、先住民には気づかれないだろう高さまで下りていって、代わりばんこで超音波を当て、ヒカリゴケを弱らせていくことにしました。
これには長い年月が必要でしたが、彼らは元来暗いところでじっとするのが好きなので、月の裏側に陣取って、気長に音波を送り続けました。
そうするうちに、ヒカリゴケは徐々に減っていって、ついには真っ暗闇になりました。
かくして、コウモリ星人は地球に降り立ちました。
彼らは地球に高度な文明の跡があるだけで、先住民がいないことを不思議がりました。
彼らが放った超音波のおかげで、先住民はみな気がおかしくなって、子が親を殺し、親は育児を放棄して、あるいは年端もいかない子どもが友だちをどうこう、かと思えばいい年をした大人が幼児をどうこう、などという事ばかりになって、ついには絶滅してしまった事は、彼らの知る由もない事でした。