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サイパン
【戦争 その他小説】

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第十六話 狙撃手の戦い-2

「敵さん、次はいつ来ますかね?」
「わからんが、今日中にあと二、三は仕掛けてくるだろうな」
 岩陰に身を隠している今野の質問に、隣の岩陰に身を隠している軍曹が小銃の点検をしながら答えた。少しの小休止の間も銃の点検は欠かさず、先ほどの戦闘の際にどこか故障していないかと入念に調べる。今野の狙撃銃には異常はなく、この後も満足に作動してくれるだろう。軍曹の小銃はというと、どこかでぶつけたのか、銃剣差しが破損していて、着剣ができなくなっていた。
「なんてこったい。白兵戦の時には相手を撲殺しなきゃならんじゃないか」
 軍曹は苦笑いして着剣装置を眺めた。軍曹の腰には軍刀が差してあるが、咄嗟の白兵戦時には、いちいち小銃を置いて刀を抜く暇などないため、銃剣や銃本体の銃床が頼りになるのである。撲殺といったのは銃剣が使えないので、銃床で相手を殴って倒さなくてはいけないからだ。
「軍曹殿は白兵戦が得意ではないですか」
「ありゃ、銃剣術の話だ。そいつが先ほど使えなくなっちまったんだ」
 軍曹は悔しそうに軽く唸った。彼は銃剣術に優れており、部隊内で行われた銃剣術の大会で、準優勝を取ったこともあった。
「嘆いてもしゃあない。できるだけ白兵戦前に撃ち殺すようにするさ」
 軍曹は白兵戦時の不安を飛ばすように、自己解決の弁を述べた。今野は、いきなり敵が飛び出てきたらどうするんだと一瞬思ったが、その時には俺が敵を撃ち殺してやればいいや、とこちらも簡単に自己解決した。
 いくつもの銃声が突然響く。敵の第二波のお出ましだった。


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