私の王子様-9
「それに、ロリコンなのはお互い様ですよ?」
結婚当初、店主は27歳で奥さんは18歳だったうえに、奥さんはかなりの童顔で13歳位にしか見えなかった。
自分の事を棚にあげて何を言うのか、と奥さんはつっこむ。
「オレは幼女趣味じゃなくて、キミが好きなだけです〜」
例えすっごい年上のおばあちゃんでも好きだよ〜、と言いながら店主は奥さんの手から赤子を受け取った。
「…………」
奥さんはそれを無視したが、顔は真っ赤に染まり口元は嬉しそうに弛んでいた。
「で?」
腕に抱いた赤子に髪をひっぱられつつ店主はデレクシスに向き直る。
「ん?」
「ギルフォード様に反対されたって連れてくつもりなんだろ?」
「ああ、そうなんだけどね」
「何だよ?歯切れ悪ぃなあ」
曖昧な返事をするデレクシスに、店主は片眉を上げた。
「うん……あのさ、生まれ変わりって……信じるかい?」
「はあ?」
「いや、実はね……」
デレクシスは朝方見た夢と、ジェノビアの様子を店主に教えた。
「夢だと思ってたけど、もしかしたら夢じゃなくて現実なのかなあ」
デレクシスは深く溜め息をつくと、お茶を一口飲んだ。
「えっと、デレクシス様がヘコんでらっしゃる理由が良く分からないのですけど?」
ジェノビアがかつて愛した女性ウィルだとして、何故ヘコむのか?
生まれ変わって、また出逢えて愛し合えるなんて最高の奇跡ではないだろうか?
と、店主の奥さんは首を傾げる。
「もしそうだとしてもそりゃあ嬉しいけど……私は『再びウィルを愛したい』訳じゃなくて『ジェノビアを愛したい』し『ジェノビアに愛されたい』んだ」
ジェノビアがウィルだから惚れた訳じゃない。
ジェノビアがジェノビアだから惚れたのだ。
「ああ、成る程」
「それにさ……あんな風に無意識にウィルが出てくるって事はさ……ジェノビアがウィルに引きずられている可能性もある訳でさ……」
ジェノビアが小さい頃から好き好き〜と、デレクシスに向けていた気持ちがウィルのものだとしたら?
だとしたら、ジェノビア自身には他に愛すべき男性が居るのかもしれない。