私の王子様-4
「悪いのはザックさんでは無いのですから……ね?」
ね?のところでデレクシスに顔を向けてにっこり笑ったステラの目は……全然、全く笑って居なかった。
せっかく溶けたと思った空気が、再び氷点下にまで下がった。
「ああ、それもそうだな」
ギルフォードは無表情で納得し、ザックを離す。
『デレク!ここは撤退だ!』
ギルフォードの手が離れた途端、ザックはデレクシスに向かって飛びながら巨大化した。
「待て!逃げるのか!!」
「も、申し訳ありません!後程、改めてご挨拶に伺います義父上!!」
ナイスコンビネーションでザックに飛び乗ったデレクシスは、空高く飛び上がりながら叫んだ。
「ち、ち、ち、父などと呼ぶなぁ!!軽薄王子めがあぁっ!!!!」
顔を真っ赤にしたギルフォードの怒号が城内に響く。
その横で静かに佇むステラが、静かなだけ余計に恐ろしかったデレクシスであった。
『まったく……ノービィに手を出すなら順序ってもんがあるだろう?』
「ああ、まあ、そうだよねぇ……うん、すまない」
呆れた声で言うザックにデレクシスは気まずそうに答えた。
『まあ、ボクに言わせれば、やっと手を出せたかって感じだけどね』
「出せた?」
妙な言い回しにデレクシスは眉をしかめる。
『ノービィが産まれた時からベタ惚れなのに、いつになったらアタックするのかなぁって思ってた』
「!!?」
『君の心はボクには筒抜けなんだよ?客観的に見れる分、ボクの方が分かる事が多いんだよ』
精霊と意識を共有するという事は、隠し事が出来ないという事か……と、デレクシスは改めて気付いた。
「早く教えてくれれば良かったのに」
『言ったって「はい、そうですか」って納得できる内容じゃないじゃないか。こういう事は自分で気付かなきゃ』
それはそうなのだが、分かっていれば順序やら準備やら整える事も出来たかもしれないのに、とデレクシスは良い歳こいて拗ねてみせるのだった。
その頃、ファンの城ではジェノビアが幸福の絶頂に包まれていた。
「あぁ 夢みたい夢みたい夢みたい」
デレクシスの残り香を堪能しながら1人ベットで悶える姿は、姫としてはちょっと情けない。