私の王子様-2
しかし、それも終わりだ。
こうして愛する人を見つけ、守っていく事を決意したのだから。
昨夜見た夢はその決意の現れなのだろう、と自分の中で結論付けたデレクシスは、愛しいお姫様の頬に優しく唇を落とした。
「……んぅ」
可愛くむずがったジェノビアがうっすらと目を開ける。
瞼の間から覗く蒼い瞳は相変わらず綺麗だ。
「朝だよ」
デレクシスが囁くとジェノビアはふわぁっと微笑む。
「……デレク……」
「?!」
しかし、ジェノビアの口から出た言葉にデレクシスはギクリと身体を強張らせた。
ジェノビアはデレクシスを「デレク」と愛称で呼んだ事は1度もない。
いつも「おじ様」、もしくは「デレクシス様」だ。
なのに、殆ど無意識に口にした言葉が「デレク」……しかも、その発音は現在のものと違っていた。
そして、微笑む表情もいつもの彼女と違う。
「ジェ……ノビア?」
掠れた声で彼女を呼ぶと、ジェノビアは微笑んだまま目を閉じ、再び開ける。
そして、パチパチと瞬きをしてゆっくりと息を吐いた。
「おはよう……ございます……おじ様ぁ」
ふにゃあっと幸せそうに笑ったジェノビアの顔は、先程微笑んでいた時の表情と違いいつもの彼女だった。
デレクシスは身体の力を抜いてジェノビアに微笑む。
「おはよう、愛しいお姫様」
赤く染まった顔でくすぐったそうに笑ったジェノビアは、もぞもぞ動いてデレクシスに抱きつく。
その頭を撫でてやりながら、デレクシスは何とも言えない不安に駆られるのだった。
2度寝してしまったジェノビアにキスを残し、部屋を出たデレクシスは離れにある自分の部屋へと向かう。
城と離れを繋ぐ長い回廊を歩いていると、相棒ザックが意識を繋いできた。
『デレク!そこはやばい!』
「ああ、ザック。おはよう。朝一番に何事だい?」
姿を見せずに意識だけを繋ぐなんて珍しいなあ、と思いつつデレクシスは呑気に挨拶をする。
『いいから!逃げろ!』
「はあ?」
籔から棒に何なんだ?と間抜けな返事をしたデレクシスに、突如として寒気が襲った。
それは殺気に近いもので、デレクシスはバッと身を構える。