私の王子様-12
「そうだね。凄く好きな女性が居るのは本当だよ」
「っ……今でも？」
「うん。凄く大好きで凄く大事……でも、もう居ないから」
「ノービィは……そのヒトの代わり？」
「違うよ。ジェノビアはジェノビア。ウィルと……私の好きな女性だけどね、彼女と君は外見も中身もあまり似てないしね」
ウィルは全体的にほっそりしていて貧乳、ジェノビアは出る所はバーンと出て引っ込む所はキュッと締まっているグラマータイプ。
性格もウィルの方が積極的であまり先を考えない猪突猛進型だが、ジェノビアは計画を練って布石を敷き、外堀から攻める感じだ。
「ね？似てないだろう？」
目の前で首を傾げるデレクシスに、ジェノビアは言い憎そうに言葉を紡ぐ。
「あのね、おじ様……ノービィ、良く夢を見るの」
「どんな？」
「ノービィは水の精霊人でね、若いおじ様とお話してるの」
「ふうん？」
「声は聞こえないんだけど、夢の中のノービィはおじ様が大好きで大好きでね？でも、それが凄く苦しいの」
「うん」
「ねえ？おじ様？おじ様は産まれ変わりを信じる？」
「……」
「ノービィがおじ様の好きなウィルさんの産まれ変わりだから、おじ様はノービィを好きになってくれたのかな？」
「……は？」
「ノービィがウィルさんの産まれ変わりじゃなかったら……おじ様、ノービィ好きにならなかったかな？」
ジェノビアは耐えきれないといった感じでボロボロと涙を流した。
「ちょ……」
ジェノビアのまさかの言葉にデレクシスは困惑する。
デレクシスはジェノビアがウィルの記憶に引きずられて自分を好きになったのではないか、と危惧していた。
しかし、ジェノビアは自分の中にウィルが居るからデレクシスが自分を好きになったのだ、と思っている。
つまり、お互いに相手の自分に対する想いが、勘違いではないのか？と不安になっているのだ。
「プッ」
デレクシスは思わず吹き出してしまい、更に肩を揺らして笑い出す。
「わ、笑う所じゃないですぅっ」
突然笑い出したデレクシスに呆気に取られたジェノビアだったが、中々笑い止まないので泣いている自分が馬鹿らしくなって頬を膨らました。