第十五話 陸戦隊VS海兵隊-1
「で、陸軍の連中はまだ来ないのか?」
狭い九五式軽戦車、通称ハ号の中の車長席で、宮中上等兵曹はいらだちを隠せないでいた。
「そう怒らんでください。そりゃ、この砲撃じゃ満足には動けませんよ」
操縦手の椎名上等兵は、乾パンをかじりながらやれやれと言った感じで宮中をいさめる。
彼ら、海軍陸戦隊の面々は敵軍上陸初日の夜、反撃の夜襲のために集結した。しかし、彼らに連動して夜襲をかける手はずの陸軍部隊の集結が遅れていた。その原因は、海上からの米艦隊による砲撃にあったのだが、宮中の不満は陸軍に向けられていた。このような状況下では見えない敵よりも、見える味方に不満の矛先が向くのは、ある程度仕方ない心理ではあるのだが……。