第43章 何も知らない少女のように、薔薇色の未来を夢見てしまう-1
翌日の昼休み。校庭の中庭で二人でお弁当を広げていた。
「って、キャラ弁!ひたぎにそっくりじゃん!HITAGI LOVEの文字までハッキリと読み取れる!バージョンアップも甚だしいな?」
「はあ↓・・・水晶は何でもできるのね?私は蓋を閉めて、ハンカチで包んだだけよ・・・」
「そうか。ひたぎが蓋を閉めてくれたお弁当は、流石に旨いな!」
「そんなに気を使わなくても良いわよ。それより、何があったの?」
昴が思わず咳き込む。
「何って? 」
「何かあったと、顔に書いてあるわよ」
「お前は、プロファイリングもできるのか?」
「それだけ挙動不審なら、バカでも分かるわ」
「そ、そうか?何か変かな?」
「変よ!白状なさい!」
長い沈黙が続く。そして、昴がぼそりと言った。
「昨日、愛子さんが部屋に来て、ちょっと話した」
「それで?」
「ひたぎを大切にしろと・・・ひたぎと二人で幸せになると約束しろと言われて、約束をした」
「そう。それはよかったわね。それで?」
「そ、それで・・・」
「愛子さんとしたの?」
ひたぎが昴を睨みつける。
「いやいやいやいや、そんなことはけしてない。少しだけ初体験のアドバイスを・・・」
「アドバイス?肉体を使って?」
「聞いてくれ!」
「聞かせてもらうわ。私のいないところで、どんないやらしいことをしたの?」
「愛子さんは・・・僕の母親のような人だ・・・」
「なおさらイヤラシイわね?私というものがありながら、近親相姦に走ったと、そうゆうこと?」
「女性を喜ばせるための心得を教わった。でも、僕の体に愛子さんは触れていないし、愛子さんの体には・・・少しだけ触れたけど、これで、最初で最後だと約束したんだ・・・」
ひたぎが、怒りに震えているのが分かる。
「ごめん。僕が悪かった・・・ひたぎを幸せにすると約束した。ひたぎを大切にすると約束したんだ、だから、もう心配ない。それじゃ、だめか?」
「どうしてあなたはこんなに私を好きにさせたの?今の私は何も知らない少女のように、あなたと薔薇色の未来を夢見てしまう。バカだと分かっていても、今の私はそれを止められない。それほどあなたにまいってしまっている・・・
そんな私の王子さまが、美しい女性からセックスの手ほどきを受けた・・・一瞬であっても王子さまの心を他の女性に奪われた・・・どんなふうに見詰め合ったのかしら?抱き合ったのかしら?キスをしたのかしら?あんなに美しい女性の体に触れて・・・私の王子さまは・・・
もう心配ないと自分に言い聞かせようとしても、私の心は少女のようにそれを受け付けないの・・・
こんなに辛いのは初めてよ・・・苦しくて、胸が潰れそう・・・助けて、すばる・・・」
昴がひたぎの手を握りしめる。
「幸せにする。ひたぎを必ず幸せにすると約束する。僕はひたぎを将来の妻として、子供を作る相手として、家庭を築く相手として欲している。生涯を掛けて、ひたぎを守る。だから信じてくれ」
「それって・・・プロポーズなのかしら?」
「あ、いや、そのつもりだけど・・・ただ、正式には改めて、場所や言葉を選んで・・・そうゆうことだ・・・」
「信じて良いのね」
「幸せにする。約束だ」
「そう。今回だけは特別に許してあげます」
ひたぎは簡単に許したが、それには理由があった。他に気になることがあったのだ。
「瞳さんは、どうしているの?」
「忙しくしているよ?」
「胸騒ぎがするの」
「あの人は、僕のことなど気にしていない。心配ないよ」
「そう・・・」
ひたぎはそれ以上の追求をあえてしなかった。