疑惑…-2
「…………。」
ぼんやりと目に映る白い壁。手首がズキズキする。薬品の嫌な臭い。
「杏っ!」
「……。」
母の声が聞こえる、腰を上げ振り向くと他に菫と東堂クンも居た。
確か私は、絆にもう二度と会えない事に絶望し、ようやく自室から出て、居間から刃物を取り出し、誰にも見つからないようにお湯をはり、そして自分の手首を……。
「ホント、私ってばどうかしてた……。」
「……。」
斬り付けた手首を流れる湯船につかせ、もうどうにでもなれと意識を朦朧としていると、たまたまトイレに寝室から起き上がった父が、流れるお湯の音に不審を抱き、変わり果てた私を見つけ。
うっすらと消えゆく意識の中、酷く動揺した母が震える手で、私に刃物を向けてて。しかし救急車を呼び終えた父が戻って来て、我に返ったそうで。
それから救急隊と両親の懸命な願いにより、一命を取り留めたようで。
私はこのような行為をしたそもそもの理由を思い返し…。
「絆……、絆。」
「杏……。」
不意に生存が絶望的な彼の事を口にし。
そうだ、彼は生きてる!彼の親が世界中を飛び回って名医を見つけて!
独り言のように語り出す私に、返す言葉もない一同。そこに。
「彼なら…、亡くなった。」
「え……。」
いつの間にドアを開け、病室に戻ってきた父が言う。
「亡く、なった?。」
顔を出すや否や唐突な胸に刺さる言葉。
「あぁ、今から一週間前…、お前が死のうとしたその翌日だ、葬儀屋から出ていく彼の両親を見かけた…。」
「そんな…。」
あれから一週間も…。やっと目を覚ましたっていうのにいきなり酷い冗談を…。しかし父の横に居る母も重たい表情で、これは…。
絆が死んだ…だなんて信じない!彼は今も生きてる…一応。でも、あの日手術が失敗して
オバサンも私も酷く絶望して、それは絆だってそう、あの時は手術後で眠ってたけど、後で目を覚まして私達と同じ事を聞いた筈…。それを聞いた彼を思い浮かべたくもない、私達以上にショックを受けたに違いない、何せ本人何だから。病は気から、最後の望みが途絶えこのまま私を残して死ぬと感じた彼は一気に生気を全身から全て失い、そのショックで病にドンドン虫ばされ、息絶えた…。それで暗い表情で、息子の葬儀を決めていたのだろう。
「あ……あぁ!絆、絆ぁっ!」
あのまま夢の中に居たかった…、ずっとずぅーっと永遠に。