シロ-2
『あ、そういやお前の名前聞いてなかったな。お前何て言うの?アザだらけだからクロ?』
そぅ言って彼は笑う。
耐えきれなかった。
『…ごめん、帰る…本当ありがとう』
彼に顔を見られたくなくて、急いで部屋を出る。
後ろから彼の叫び声がする。
彼と会って数時間。いつの間にかあたしは彼の事をもっと知りたいと思っていた。こんな気持ちは久しぶりで、嫌にドキドキする。でも、彼を捕まえる事はあたしは出来ないのも分かっていた。だから、辛くなる前に……
『……あッ!』
あたしはおもいっきり顔から下へ落ちた。倒れるあたしの横では、車椅子がクルクルと車輪を回転させている。
ほら、こんな小さな石で転んで…
あたしには自分で立ち上がる力は残っていなかった。
あたしは彼が大好きだ。
伝えたいのに伝えられない。
きっとこんなあたし誰も愛してくれない事くらい分かってる。
『邪魔だし』
『恥ずかしい』
『行きたい所いけねぇし』
『てか、身体障害者じゃん?』
『……あなたも、そんな事言うんでしょ…?』
地面に涙が落ちて濡らしていく。人気のない公園の片隅。
今まで積もりに積もった思いをいつの間にか口に出していた様だ。
『……あーあ、またかよ』
あたしの頭の上から声が聞こえた。その声を聞いて一層涙が溢れ声も大きくなる。
彼の顔を見れない。地面に向かって涙が止まらない。
『……一緒に…来るか?』
彼があたしを起こし、涙を指で拭き取りながら笑って言った。
あたしはただただ、頷くしかない。そんなあたしに彼はシロと同じキスをした。