シ-7
「今日は楽しかったか?」
「うん。いろいろなところに連れて行ってもらっちゃった」
「そうか」
10以上も年下の坊主に軽く嫉妬する。
「今度は豪さんも一緒に行こう?」
何気なく言った俺の名前に反応した。
「・・・・」
ジッと見つめる俺に気がついて
「名前、聞いちゃった」
なんて舌を出す。
「名前で呼ぶな」
テレビを見るふりをして顔を背け
淡々と言う俺の、目の前に来て座り
テレビへの視線を遮った。
「なんで?好きになられちゃ困るから?」
軽くトロンとした顔で唇を突き出してむくれている。
「まさか・・・お前1本で酔ったとか言わないよな?」
え?ビール1本で酔ったのか?
「なによぅ。答えなさいよ。豪!
私に好きになられちゃ困るから『片桐さん』って呼ばせてるわけ?」
酔ってる・・・・
「豪!こら!答えろ!」
酔うと本音が出るんだな。
たった1本で酔いやがって。
あまりの可愛さに髪をクシャっとした。
「好きになりそうなのは俺の方だよ」
酔っぱらい相手に何を言ってるんだ。
自分の言動に可笑しくなったが、あまりにも可愛くて
言わずにはいられなかった。