Mの魔性-4
しかし縄が肉体に食い込んでいる奈緒の吐息は熱くなるばかりだ。脚を内股に擦り合わせ翔太の決意を待っているかのようだった。奈緒は背中にある非常用シャッターの柱にもたれ掛かる。
「ねぇ、柱に縛り付けて…?」
手を上に伸ばし柱を挟んでクロスさせる。
「い、いや…」
躊躇う翔太に甘く囁く奈緒。
「お願い…縛って…?」
フェロモンが翔太に襲いかかる。クラッと目眩すら感じた。翔太は思わずはい、と答える。フラフラッと手錠と縄を手に取り、手首に手錠をかけると上方で柱に手を縛り付けた。
「そう…ありがとう…」
潤んだ目が堪らなく感じる。まさか奈緒を縛りつける事になろうとは思わなかった。しかもそれを望んでいる奈緒が信じられない。しかし奈緒に見つめられ囁かれると、催眠にかかったかのように従ってしまう自分がいた。
翔太が正面に回ると、奈緒はじっと翔太を見つめながら吐息混じりの色っぽい声で囁いてきた。
「安本君…、いつも偉そうな事ばかり言ってごめんなさい…。セックスの事しか頭にないただの淫乱人間のくせして安本君に仕事を押し付けて…。」
「そ、そんな…」
「私は今、何もできないわ…?無能な人間。こんな無能な人間が部長なんて役職に就いててごめんなさい。こんな私に…お仕置きして…?」
「い、いや…」
「お願い…。鞭で叩いて…?蝋燭で懲らしめて…?ハイブで私を苦しめて…?」
妖しく光る瞳に吸い込まれそうだ。神経がやられそうだ。次第に奈緒の為ならどんな事でもしなくてはならない…、そう思うようになった。
「ぶ、部長が望むなら…、僕は…それに従います…」
そう言った翔太が気付かない所で奈緒は口元を緩めた。
「こんな私についてきてくれる安本君…。感謝してる…。本当に優秀な部下…。私は幸せ者だわ…。さぁ、安本君…。私を叩いて…。鞭で…懲らしめて…。」
翔太は鞭をギュッと握り締め、そして言った。
「分かりました…。」
と。