第41章 だた私の傍にいて。それだけでいい-1
翌日、ひたぎの提案で二人はファーストフード店を訪れていた。
「ひたぎが、ハンバーガーが好きだとは知らなかったよ」
「どちらかと言えば嫌いかしら?」
「嫌いって、何をしに来たんだ?」
「そうね。そこまで考えていなかったわ」
「って、何で俺たち並んでいるんだろう?」
「高校生らしいデートがしたかっただけよ。嫌なの?」
「嫌じゃない。嫌じゃないが・・・」
「メニューのチョイスは任せるわ。太らないものが良いわね」
「ファーストフードに太らないメニューなんてあるのか?」
「何とかしなさいよ。ちなみにコーヒーも嫌いよ!」
ひたぎの笑顔がこぼれる。何時になく上機嫌だった。
「お勧めのメニューは、そうだな、ハンバーガーにコーラだな?」
「太った私が見たいのかしら?」
「ハンバーガーにかぶりつくひたぎは、さぞ、絵になるだろうな?」
ひたぎが昴をジロリと睨む。
「この品性の欠片もない下衆な男は、私の下品な姿に萌えるのかしら?」
「萌える!萌える!可愛いらしいこと請け合いだ!」
「そっ、そこまで言うのならハンバーガーを食べて上げます」
ハンバーガーとコーラを買い求め、手を繋いで公園へと歩き始める。ひたぎの笑顔と優雅な歩き姿に、昴は胸はときめかずにいられなかった。ベンチを探し、ハンカチを敷いてひたぎを座らせる。
「昴はエスコートがとても上手なのね?さりげなく人の流れから私を守ってくれる。とても気分が良いわよ」
「そうか。ひたぎの幸せが、僕の幸せだ」
「そっ、それなら話が早いわ。私、浮気をしようかと思うの!」
「!!!!!」
水晶のことがあったばかりで、冗談に聞こえない。
「私の幸せがあなたの幸せでしょう?私が浮気をして幸せになれば、あなたも幸せなはずよ」
「って、どんな理論だ!」
「嘘よ!昨日の事があって、少し苛めたくなっただけ・・・」
「僕は、浮気はしない。誓うよ」
「私はするわよ!」
「って、おい!」
「ねえ、昴。私のこと、好き?」
「好きだよ。愛してる」
「瞳さんよりも?」
「あたりまえだ」
「愛子さんよりも?」
「もちろん」
「水晶よりも?」
「僕の中で、ひたぎは、他の女性とは比べ物にならないほど大切な人だよ」
「そう。私も好きよ。昴の優しくて可愛いところがとても好き。そんなあなたが、私のことを好きだと言ってくれる。他の女性とは比べものにならないほど大切だと言ってくれる。今の私はとても幸せよ。これ以上、望むべくもないのに・・・とても不安なの。
昨日、あなたは苦しみぬいて、私への愛を証明してみせた。あなたの気持ちに嘘はない。それが痛いほどに伝わってきたわ。でも、それほどまでしても不安は取れなかった。あなたを試すことなど、意味の無いことだと分かったの。だから昴。だた私の傍にいて。それだけでいい。それだけで安心できるの」
「もちろんだよ。僕はずっとひたぎの傍にいる」
「私は、あなたに何を返してあげられるのかしら。私が傍にいるだけで、あなたも幸せなのかしら?」
「ああ、それが僕の最高の幸せだよ!」
「そう・・・ハンバーガーを食べたくなったわ。それも口いっぱいにほおばってね。あなたがいなければ、そんな事考えもしなかった。あなたのせいよ・・・」
「そうだな。でも僕は、ひたぎのどんな姿にも萌えるよ」
「今も?」
「ああ、首を傾げたひたぎの仕草に、僕を見つめる優しい笑顔に萌え萌えだ!」
「そっ、私も優しいあなたに萌えているわ・・・」