サイコパス診断-2
*
どれくらい時間が経っただろう。ドアが開いて、アユミが入ってくる気配がした。
「ただいま。」
「ん、お帰り・・・」
アユミが戻っても、俺は動画に夢中になっていた。
そんな俺を変に思ったんだろう、アユミはドアの前に立ったまま、じっと俺を見ているようだった。
「…ねぇ、なに見てるの?」
部屋の入口に立ったまま、アユミが聞く。
「ん…あぁ、‘サイコパス診断’って動画なんだけど…。」
「サイコパス?何それ、超能力?」
アユミは、サイコパスのことを知らないらしい…まぁ、普通に知ってる方がイヤだけど。
「ん〜…まぁ、そんなトコかな。」
なんとなく、悪戯心が湧いてきた。サイコパスが精神異常者だと知っているなら聞きにくいけど、それを知らないアユミに、この診断を受けさせてやろう。
「せっかくだから受けてみなよ、俺が診断してやるから。」
「え〜っ…私って、霊感とかそういうの全然ダメなんですケド・・・。」
「はは、これで目覚めるかもよ?」
「え〜、ムリだよ〜〜」
「まぁまぁそう言うなって…じゃあ、第一問な。」
そのまま再生するとホラーっぽいBGMが流れてしまうので、俺はパソコンをミュートにして、診断を始めた。
第一問
あなたは、一面を木で囲まれた深い山奥にいる。
あなたの目の前にはちょっとした休憩スペースがあるが、その後ろを何かがざっと過ぎ去った。
果たしてそれは何か。
1.鬼
2.人
3.落ち葉
「お〜、なんか超能力っぽい!『見えます…!』みたいな?」
まったく違うワケだが、とにかくアユミは上機嫌だ。
「ん〜〜〜・・・・よしっ、見えた!2番の『人』です!」
そして超能力者の真似(?)をして、見事にサイコパスの回答を選んだ。
「…どう?正解?」
この質問は、一応2番がアウトらしい。そういう連中は、「深い山奥」で死体なんかを埋めてる時に、一番会いたくない「人」を連想してしまうそうだ。
だけどこんなの、「人」って答えるヤツは結構いるはずだ。「鬼」なんてのは非科学的だし、「何かが…過ぎ去った」と質問しといて、「落ち葉」は答えにくい気もする。
「ははは、結構才能あるかもよ?」
「やった〜」
しょせんはネットの情報、鵜呑みにするとバカを見る。
「ん〜…確かに、なんか目覚めてきたかも…!早く、次の質問!」
「ハハ、はいはい…」
俺の気も知らず喜ぶアユミに、次の質問をしてやった。
第二問
サンタクロースが、ある男の子にサッカーボールと自転車を与えた。
ところが、その男の子は喜ばなかった。
何故か。
「ん〜〜…むむむ、ちょっと待ってね。もう少しで見えそうだから・・・」
見えてしまった方が、ある意味サイコパスよりコワい人かもしれない。
「む〜、これはね〜・・・・その男の子は、事故かなにかで、足が無かったんだよ。ちがう?」
そしてアユミは、またサイコパスの回答をしてしまう。
「はは、やっぱ才能あるよ、アユミ。」
この質問は、俺も「男の子は足に障害があった」という、似たような回答をしていた。まぁ俺の場合、サイコパスが何かを知った上で答えていたから、ひねくれたのが初めに浮かんだかもしれない。でもこれくらいは、一般人でも普通に出てくるだろう。
「…ヤバイ。マジで私、秘められた力に目覚めてきたかも…!」
「ヨカッタな」
「なんで気のない返事するかな〜」
…とはいえ、さすがに二問連続アウトはどうかと思うので、そろそろ常人の回答をしてもらってお終いにしよう。
第三問
あなたが殺さなければならない相手が、あなたの前で断崖にぶら下げられ、棒のような物に掴まってようやく生きている。
あなたは、どのようにして相手を断崖の下に落とすか。
「…なんか、急に怖い質問になったね?」
「あれじゃね?超能力っつっても透視とかスプーン曲げるだけじゃなくて、敵を攻撃するのもあるだろ、ポケモンみたいに。そっちの適正を見てるんじゃね?」
「う〜ん・・・」
「あぁその代わり、『サイコキネシスを使う』って回答はナシなw」
全く適当なことを言って、回答をうながす。この質問は、普通なら「足で踏む」とか「棒を切る」、ひどいところで「手首を切る」。そのどれでも、常人の回答らしい。
「…相手の指を、一本ずつ剥がしていくかな。」
「・・・・こりゃまた、ザンコクだね〜」
「え、だって・・・アニメとかマンガでよくあるでしょ?」
言われてみれば、あるかもしれない。最近は色んなのがあるし。
でもアユミって、そんなマンガ読んでたっけ?
「…?どうかした?」
「いや、何でもない。じゃあ、次の質問な。」